養護教諭の仕事は、楽だと思われがちです。実際、生徒からは「ほけんの先生って暇そう」と言われ、同僚からは「養護教諭って何してるのかよくわからないんだよね」と、言われてしまうことが多いです。しかし、実際のところは、養護教諭の仕事は全く「楽」でも「暇」でもないのです。
もし「楽そうだから」という理由で、養護教諭の職に就いてしまうと、後で痛い目に遭ってしまう可能性があります。そのため、保健師として養護教諭の仕事を目指すのであれば、養護教諭保健師のリアルな悩みについて事前に知っておくようにしましょう。
1.養護教諭はあえて「暇そう」にする必要がある悩み
養護教諭の保健師は、学校に通う生徒らが気軽に話しかけられるように、どんなに忙しくても忙しい雰囲気を醸し出すことはできません。つまり、あえて「暇そう」にしていなければならないのです。
特に、心に悩みを抱えている生徒の場合は、相談したい相手がいかにも忙しそうにしていると、それだけで心を閉ざしてしまう可能性もあります。そのため、養護教諭は彼らの心のオアシスとなれるよう、常にゆったりと構えていなければならないのです。
養護教諭は居場所がない生徒達の「癒し」の場
保健室には、保健室登校をしてくる生徒もいれば、「何となく」訪れてくる生徒もいます。彼等に共通するのは、「学校に居場所がない」ということです。そんな彼等を受け入れられる場所は、養護教諭のいる保健室しかありません。
そのため養護教諭は、居場所がなく孤独な思いを抱えている生徒達の「癒し」の存在でもあるのです。そんな癒しの存在である養護教諭が、いつも忙しそうにしていては、居場所がない生徒達は更に居場所を失ってしまいます。
理解のない管理職から保健と無関係の仕事がまわってくることも
学校の管理職が養護教諭の仕事に対して、あまり理解がないと、「暇そうだから」と言って、保健業務とは全く関係のない仕事が回ってくることもあります。確かに、担任の先生方は非常に忙しいですから、もし余力があれば養護教諭も手伝うべきです。
ただし、それで本業がおろそかになることは避けなければなりません。
管理職への報連相を怠らないことが大切!
養護教諭の仕事は、外から何をやっているか見えずらいため、管理職への報連相を怠らないようにする必要があります。そこをおさえておけば、むやみやたらに、保健業務以外の仕事が回ってくることもないでしょう。
2.膨大な事務作業を1人でこなさなければならない悩み
養護教諭の保健師は、生徒と関わるのが主な仕事だと思われがちです。しかし実は、人目に触れない裏側の事務作業の方が比重が重たいのです。ただ、病院勤務のように時間に追われたり、激しい肉体労働があるわけではないため、その点においては看護師よりも楽だと言えます。
最近では、養護教諭を2人体制にしているところも増えてきていますが、基本的に養護教諭は1人職です。1人で、生徒と教職員全員の健康管理を担っていかなければならないため、当然、事務作業が膨大な量となるのです。
健診前後は夜遅くまで残業があるので注意
年間を通し、養護教諭の仕事が一番忙しくなるのは、健診や検査が集中する一学期です。この時期は、年度から準備を始めても膨大な仕事量となります。特に、健診前後となると、他の教職員が定時で帰っていく傍ら、養護教諭は夜遅くまで残業をしなければなりません。
個人情報に関わるため仕事を持ち帰ることができない
健診で扱う書類に関しては、生徒・職員の、絶対に漏れてはいけない個人情報を記載されているため、紛失・盗難などがないよう、持ち帰って自宅で仕事をすることもできません。そのため、やむなく学校で残業せざるを得ないのです。
3.学校内に相談できる相手がいない孤独が悩み
基本的に養護教諭は「1人職」であるため、他の教職員らに仕事の実情を理解してもらうのが難しく、指導方法についてもアドバイスしてくれる同じ立場の先生もいません。そのため、養護教諭の中には「相談できる人がいなくて孤独」と感じる人も大勢います。
しかし、これは養護教諭の立場上、これは仕方がないことでもあるのです。このように、ときに孤独と戦いながら、それでも笑顔で、保健室に来室し生徒たちを迎えるのが養護教諭なのです。
新任でも誰も仕事を教えてくれない
学校内に、養護教諭の仕事について相談できる人がいないということは、当然、新任の養護教諭に対し、仕事を教えてくれる人も誰もいないということです。そのため、養護教諭は自分の力でなんとかしながら、「情報の点」を結んで「線」にしていくしかないのです。
そうすると、「前の先生とやり方が違う!」などと、文句が飛んでくることもありますが、それでへこたれているようではこの仕事は務まりません。
他の学校の養護教諭に電話で頼るしかない
特に新任の養護教諭は、自分1人の力ではどうにもならないこともあります。そんな時は、近所の学校の養護教諭や前任の養護教諭に電話で頼るしかありません。中には「就任して最初は毎日、前任に電話をかけていた」という人もいます。
4.養護教諭は安易に休むことができない
一般の教職員であれば替えがききますが、養護教諭はそうもいかないため、安易に仕事を休むことはできません。特に子育て中の養護教諭は、この点に悩まされることが多いようです。また、よっぽどの体調不良でもなければ、出勤して保健室を開けなければなりません。
「仕事は忙しい上に、容易に休むことができない」というのが、養護教諭にとってのつらいところです。
自分の子供の行事に参加できない可能性もある
子育て中の養護教諭であれば、子どもの学校行事などで、何かと休暇が欲しい時もあるはずです。しかし、自分の子供の学校行事と、勤めている学校の行事が重なってしまうケースは珍しくなく、そういった場合は職場の方を優先させなければなりません。
自分が体調不良でも保健室を開けなければならない
よっぽどの高熱や感染性が強い疾患にかかったわけでもなければ、自分が体調不良でも保健室を開けなければなりません。しかし、そういった場合は、マスクなどを利用しながら、生徒に自分の体調不良が悟られないよう万全の配慮をしていかなければなりません。
5.養護教諭は緊急時の責任が重い
健常児がほとんどの一般の学校であっても、急変などの緊急事態に遭遇するケースがあります。一番多いのは、ケガに関するものですが、一型糖尿病や喘息などの持病がある生徒に関しては、急変することも考えられるのです。
そういった緊急事態が起こった時、養護教諭は絶対に判断を誤ることができないため、非常に責任が重いのです。
一時処置を誤ると大事になる可能性がある
学校で起こる緊急事態の代表が「骨折」です。骨折の疑いがある時は、養護教諭の一時処置が非常に肝心です。しっかりと固定した上で、すぐに整形外科へ連れていかないと、生徒の成長に悪影響をもたらす可能性があります。
急変対応は万全にしておく必要がある
養護教諭は、急変対応を万全にしておく必要があります。いざとなった時、養護教諭は冷静に判断・対応し、他の教職員や生徒らを安心させなければならないからです。「なかなか急変時の準備をする時間がない」という人もいますが、自分自身が1人職のプレッシャーに押しつぶされないためにも、研修に参加するなどして、急変時に備えておくようにしましょう。
まとめ:1人職ならではの悩みが多い仕事
養護教諭は、このように沢山の悩みがあるにも関わらず関わらず、「仕事が楽」だと思われてしまうのは、非常に残念なことです。しかし、楽そうだと思われるのも仕事のうちなのだと割り切っていくしかありません。そして、養護教諭の場合は「楽そう」に見られることが一人前の証でもあるのです。
本文でも述べた通り、養護教諭は1人職ならではの悩みが多い職種ではありますが、生徒らとの交流は多大なやりがいを見出させてくれることは間違いありません。学校保健に興味のある方は目指す価値のある仕事です。
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