学校保健師と養護教諭は混同されがちですが、「保健室の先生」として働くことを考えているのであれば双方の違いは明確にしておく必要があります。
まず、一般的に「学校保健師」とは、大学や短大で働く看護師のことを指し「養護教諭」とは小学校・中学校・高校で働く教員のことを指します。そのため、働く職場だけではなく、必要な資格や就職方法、さらに求められる仕事内容まで異なります。
そこでここでは、学校保健師と養護教諭の違いについて「資格」「職場」「就職方法」「仕事内容」という4つの視点から解説していきますので、「保健室の先生」になりたい看護師・保健師の方は参考にしてみてください。
1.学校保健師と養護教諭の資格の違い
2.学校保健師と養護教諭の働ける職場の違い
3.学校保健師と養護教諭の就職方法の違い
4.学校保健師と養護教諭の仕事内容の違い
まとめ:違いを知って自分に合う方を選ぼう
1.学校保健師と養護教諭の資格の違い
学校保健師と養護教諭は、必要な資格も異なります。学校保健師の場合、必要なのは「看護師資格」であり、養護教諭は「養護教諭一種免許状もしくは養護教諭二種免許状」が必要です。そのため、当然、資格取得経緯も異なります。以下に、資格取得経緯も含め詳しく説明していきます。
学校保健師は看護師資格が必要
「学校保健師」というからには「保健師」の免許が必要であるかにも思えますが、必要なのは「看護師資格」です。短大や専門学校なので保健師資格しか持っていない人は、通常、学校保健師として働くことはできないので気を付けてください
看護師資格を取得するには
例えば保健師資格しか持っていなかったり、養護教諭資格しか持っていなかったりする場合は、看護専門学校へ入学するか、4年生の看護大学へ編入すれば看護師資格を取得することができます。
養護教諭に必要なのは「養護教諭免許」
養護教諭として働くのに必要なのは、先にも述べた通り「養護教諭一種免許状」か「養護教諭二種免許状」です。
一種免許状と二種免許状の大きな違いは、一言で言ってしまえば教育実習の有無です。そして、実際の採用の現場では、一種であろうと二種であろうと、特にこれといった影響はないようです。
養護教諭免許を取得するには
養護教諭免許を取得する際は、一種を取得するか二種を取得するかで経緯が異なります。なお、すでに看護師免許を取得しているのであれば、二種の方を取得すれば大抵の事は足ります。その際は科目履修生として必要単位を取得し、必要書類を揃え都道府県教育委員会へ提出すれば、免許を取得することができます。
この辺については「保健師が養護教諭二種免許状を取得する方法と一種免許状との違いについて」に詳しく記載してありますので、ご参照ください。
2.学校保健師と養護教諭の働ける職場の違い
冒頭でも述べた通り「学校保健師」と呼ばれる人が働いているのは、大学や短大の保健室です。一方、養護教諭が働いているのは小学校・中学校・高校の保健室です。以下で詳しく見ていきましょう。
学校保健師が働くのは「大学・短大」の保健室
学校保健師と呼ばれる人が働けるのは、通常、大学・短大のみです。また、学校保健師に必要なのは「看護師資格」であることは先に述べた通りですが、募集要項には「看護師募集」と書かれていることが、ほとんどです。
このように、学校保健師は大学・短大以外の職場では働けないため、幅広い分野の学校保健に関わっていきたいと考えるのであれば、養護教諭免許を取得するようにしましょう。
学校保健師は職場が限られる
大学・短大でしか働けないとなると、当然、養護教諭よりも職場が限られてしまいます。また、大学の保健室勤務は看護師の中でも非常に人気が高いため、随時、求人情報をチェックしておく必要があります。
養護教諭が働くのは「小・中・高」の保健室
養護教諭は、学校保健師とは異なり、小学校・中学校・高校と幅広い分野で働くことができます。また、一概に小学校・中学校・高校といっても、そこには定時制・通信制・フリースクール・特別支援学校など様々な種類がありますから、大学でしか働けない学校保健師と比較すると養護教諭は職域が広いのが特徴です。
ただし、看護師資格を持っていない養護教諭は大学保健室で働くことはできないため、その点は注意しておくようにしましょう。
3.学校保健師と養護教諭の就職方法の違い
ここでは、就職方法の違いについて見ていきます。まず、学校保健師の場合は「看護師」として採用されるため、就職方法については一般の看護師とあまり変わりありません。一方、養護教諭は「教員」として採用されるため、教員採用試験を受ける必要があります。以下に、それぞれ詳しく解説していきます。
学校保健師として就職する場合
学校保健師として就職する場合は、病院などで働く看護師同様、看護師転職サイトやハローワークなどの媒体を利用することがほとんどです。なお、学校保健師の求人は、数が限られている上に人気も高いため、実際に転職活動を行う際は上記の媒体を併用することをオススメします。
なお、学校保健師への転職情報については「保健師が大学保健室求人に転職する5つの注意点」に詳しく記載してありますので、ぜひ参考にしてみてください。
看護師としての臨床経験がある方が有利!
養護教諭であれば新卒が入社することも珍しくありませんが、学校保健師は、基本的に臨床経験があればあっただけ有利です。むしろ、新卒が採用されるケースはほとんどないでしょう。そのため、今後、学校保健師として働こうと考えている方は、最低でも3年の臨床経験を積むようにしましょう。
養護教諭として就職する場合
養護教諭として就職する場合は、通常、自治体が主催する教員採用試験に受からなければなりません。また、公務員試験に受かったからといって、必ずしも養護教諭として働くことが保障されるわけでもありません。
教員採用試験に受かった後、教育委員会の方から連絡が来て職場が提示された時点で、養護教諭として働けることが決定します。残念ながら連絡がこなかった場合は、来年度に改めてチャレンジすることになります。
教員採用試験に落ちても1年はチャンスがある?!
教員採用試験に受かってからの1年間は、産休や育休などで穴埋めが必要となった場合に、臨時講師として働くよう、教育委員会の方から依頼がくる可能性があります。なお、その際は教員採用試験を受け直す必要はありません。
私立学校で働く場合は教員採用試験がない
私立の小・中・高で働く場合には、教員採用試験ではなく、その学校が独自に作成した採用試験を受ける必要があります。ただし、私立の場合はそこの卒業生が優先されることを念頭に置いておきましょう。また、求人探しについては、看護師転職サイトやハローワークを利用するようにしましょう。
4.学校保健師と養護教諭の仕事内容の違い
学校保健師と養護教諭では求められる仕事内容も異なるところがあります。なぜなら、学校保健師は「看護師」という立場で働き、養護教諭は「教員」の立場で働くことになるからです。
もちろん「保健室の先生」として最低限やらなければならないことは共通しています(保健室に来た生徒の対応・学校全体の一次予防・健診の管理)が、養護教諭の場合はそれらの業務に加え「保健の授業」も担うことがあります。詳しく見ていきましょう。
学校保健師は保健室業務がメインとなる
学校保健師が相手にするのは18歳以上の大学生であり、基本的に彼等に対しては「自立した大人としての対応」をすることになります。そのため、学校保健師は、保健室に来た大学生の対応(熱発・ケガ)がメインの仕事となります。学校保健師に「看護師」が求められるのはこういった理由からでしょう。
教員としての役割が求められることはない
なお、正社員として働くのであれば、「大学に勤務する一職員」として大学全体の会議などに参加することはありますが、養護教諭のように「教員」としての役割が求められることはありません。
養護教諭は保健室業務に加え教員としての役割もある
養護教諭は一般的な保健室業務に加え、他の教員らと同じように「保健の授業」を行うこともあります。さらに遠足・修学旅行の引率やプールの監視員、またクラブ活動の顧問など、「保健」とは全く関係のない役割を任せられることもありますが、これは学校職員として働く以上、仕方がないことです。
学校保健師よりも忙しい?!
職場環境にもよりますが、一般的には、学校保健師よりも養護教諭の方が業務量は多いでしょう。そのため、特に看護師などは「養護教諭は急変や夜勤がないから楽」と思っていると、痛い目に遭うので気を付けておきましょう。養護教諭ならではの苦労については「養護教諭の保健師は楽じゃない!「保健の先生」が抱えるリアルな悩み5つ」にもあるため、興味のある方はぜひ読んでみてください。
まとめ:違いを知って自分に合う方を選ぼう
学校の保健室で働く人を総称して「学校保健師」と呼ぶこともあるため、「養護教諭と学校保健師を分ける必要はない」と考える人もいるかもしれません。しかし本文でも説明した通り、養護教諭と学校保健師では、必要な資格から実際の仕事内容まで全く異なる部分があります。
そのため、「保健室の先生」になるのであれば、双方の違いをしっかりと把握し、自分に合った方を選ぶことが「転職成功の秘訣」なのではないでしょうか。
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