保健師は、学校保健師・行政保健師・産業保健師の3種類あります。それぞれの活躍の場は、学校・地域・企業と異なりますが、「一次予防に携わる」という保健師の仕事の基礎は変わりません。しかし一概に、「一次予防に携わる」と言われても、自分が一体どのようなスキルを身につけるべきなのかはよく分らない人が多いのではないでしょうか。
ここでは、これから保健師への転職を考えている人達にぜひ知っておいてほしい保健師の仕事に求められる3つのスキルについてご紹介します。保健師は非常に人気の高い職業であり、保健師になるためには狭き門を通らなくてはなりません。そのため、予め保健師に求められるスキルを把握しておくことができれば、面接の時にライバルに差をつけることができるはずです。
1.保健師に求められる統計力
女性の場合は数字が苦手な人が多いため、「統計」と聞くだけで苦手意識を強く感じる人は少なくないでしょう。しかし、公衆衛生に携わる保健師にとっては、統計は避けたくても避けられません。なぜならば、一次予防を進めていくためには、対象となる集団全体が抱えている問題を把握する必要があるからです。問題を正確に把握するためには、主観的なデータと客観的なデータの両方が必要です。これらのデータに基づいた問題点をあぶり出し、保健師は対象となる集団の健康増進活動につとめていきます。
保健統計学とは?
統計学は、経済・社会・心理・科学など様々な分野で活用されますが、保健師が関わるのは「保健統計学」という医療に特化した分野です。保健統計学とは、ある集団の罹患率や有病率から、今後起こりうる問題点を予測していく学問です。それでは、この統計学が保健師の仕事の実際にどのように活かされていくのかをみていきましょう。
学校保健師と統計
学校保健師の場合、対象者は学校にいる生徒全員です。学校保健師は数年間のデータを検証することで、特定の時期に流行する疾病を予測することができます(夏には食中毒・冬にはインフルエンザなど)。その予測を元に、手洗い強化や部屋の除湿の徹底などの対策を打ち出していきます。
行政保健師と統計
行政保健師の場合は、保健師の中で一番大きい集団を見ていかなければならないため、多量のデータを扱っていかなければなりません。その地域の糖尿病の疾患率が高ければ生活習慣予防教室を開催したり、母子家庭が多いとなればシングルマザーを支えるような制度を打ち出していく必要があります。
産業保健師と統計
産業保健師は、企業に勤めている社員全体の健康増進活動を行っていく必要があります。また、産業保健師の場合は企業の種類によって社員の健康問題が変化するのが特徴です。例えば工場系の会社であれば事故や腰痛などの予防がメインになりますし、デスクワーク系の会社であれば生活習慣病予防などがメインになってきます。また、産業保健の分野では厚生労働省が打ち出したストレスチェックを行い、社員が抱えるストレスを客観的なデータに基づいて鬱病などの予防対策をたてていくのも特徴です。
2.保健師に求められるのは企画力
どの分野の保健師であっても必ず何かしらの行事やイベントを企画することになります。ただ何も考えずに例年通りの企画を打ち出していくようでは、対象者の興味を引き健康を増進させることはできません。そのため、産業保健師はそれまでの常識的な概念に囚われない企画を打ちだす必要があるのです。
産業保健師の企画例
それでは、様々な分野で活躍する保健師がどのような企画を実際に打ち出してきたのかを見ていきましょう。まずは、産業保健師の企画例からみていきます。
- 熱中症予防対策
- 安全衛生教室
- 心の健康づくり
- ライン管理者メンタルヘルス研修
- 禁煙対策啓蒙
産業保健のように、対象者が「成人」となる場合は、メンタルヘルスに焦点をあてた企画が多くなるのが特徴です。最近では、大手の会社の場合は特に鬱病の社員のフォロー体制作りに力を入れている傾向にありますから、尚更、産業保健師はメンタル面に特化した企画がより多く求められるのでしょう。
学校保健師の企画例
学校保健師が行っている企画例は以下のようになります。この分野においてもメンタルヘルスに注目されているのがよく分かります。
- 手洗い強化月間
- 感染症予防教室
- 心と身体の問題について考える
- いじめ問題に向き合う
学校の保健の場合は、小学校~大学まで幅広い分野での活躍先があり、どこに所属するのかによって求められる企画が異なります。手洗い強化月間などは小学校ならではですし、心と身体の問題について取り扱うのは思春期ならではの求められる企画だと言えるでしょう。
行政保健師の企画例
最後に、行政保健師の企画例についてみていきます。
- ウォーキング教室
- メタボ予防教室
- 結核予防習慣
- 防災訓練
- プレママ教室
行政保健師の場合は、対象者が新生児からお年寄りまで幅広く、それぞれの年代に合った企画をたてていかなければなりません。そのため、行政保健師には幅広い知識が必要であると言えます。
3.保健師に求められるのは運営力
最後に、保健師の企画を円滑に遂行していくために必要な「運営力」について紹介します。対象者の健康を増進できるような事業を立案・企画しても、当日の運営がグダグダになってしまっては、せっかくの企画も無駄に終わってしまいます。
他部署を巻込んで企画を成功させよう!
保健師が事業を運営していくためには、まず準備段階で他部署に声をかけて協力を要請していかなければなりません。例えば学校保健師であればクラスの担任に協力を要請し、産業保健師であれば人事・総務・安全衛生委員会を巻込んでいく必要があるのです。
健康増進事業を行うためには、資金のやりくりや場所の確保や人の配置なども全て産業保健師が手配していかなければならず、広い視野で事業の運営を考えていかなくてはならないのです。学校保健師や産業保健師は一人職ではありますが、結局は一人で全ての仕事を補うことはできないのです。そういった面を考慮すると、保健師には協調性や連携ができるコミュニケーション能力が求められのがよく分かります。
運営力ってどうはって身につけていくの?
運営力を身につけていくためにはまず、他部署の人たちがどのような働きをしているのかをよく知っていかなければなりません。自分が抱えている仕事だけを見ていればいいということではないのです。協力要請や連携を依頼するためには、部署の特徴をおさえていないと、検討違いな依頼をしてしまう可能性すらあります。
プレゼン能力も必要です
医療の世界に特化してきた人たちにとっては「プレゼン」をする機会なんてほとんどなかったかもしれません。しかし、それは病院という限られた世界にいたからであって、一般の社会人は常にプレゼン能力が求められます。
保健師は対象者に対し、ただ必要なことだけを伝えればいいというわけではないのです。話を聞いてくれている人達がどうやったら興味を持ってくれるのか、どう説明したら大切なことが伝わるのかを工夫していく必要があるのです。そのためには、本などを使用して自分なりにプレゼン能力のスキルを向上させていかなければなりません。
まとめ
保健師には、統計力・企画力・運営力の3つのスキルが必要であることを説明させていただきました。学校や病院ではなかなか学ぶことができなかったスキルではあると思いますが、保健師として即戦力で働いていくためにはっ必ず必要なスキルです。
保健師への転職を考えている場合には、この3つのスキルについて勉強した上で、それらを履歴書や面接での自己アピール材料にして、ライバルに差をつけていくようにしましょう。
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[…] 「保健師の仕事に求められる3つのスキルについて紹介します!」 […]
[…] よって、一般の保健師同様、精神保健福祉センターで働く保健師にも統計力・企画力・運営力が求められることが分かります(この事については、「保健師の仕事に求められる3つのスキルについて紹介します!」の記事も参考にしてみてください)。 […]