保健師は医療・地域・学校・企業など、幅広い分野で活躍できる資格です。そんな保健師資格を取得するための要点は以下の通りです。
1.看護師資格があることが大前提
2.通信制や定時制はなく全日制の教育期間で学ぶ必要がある
3.フルタイムの仕事と学校の両立は難しい
4.保健師養成学校なら1年で取得可能
5.看護系大学へ編入する場合は取得まで2年かかる
保健師資格は、他の資格のようにフルタイムで働きながら取得することができないため、資格取得にあたり今の職場を離れなければならない人も多いでしょう。しかし、今後のキャリア形成おいては必ずプラスに働くことは間違いありません。
それでは、保健師資格を取得するためのポイントを詳しく解説していきます。
1.保健師資格取得には看護師資格が必須!
大前提として、保健師資格を取得するには看護師資格を持っている必要があります。そのため、現時点で看護師資格を持っていない人は、以下の方法で保健師資格を取得していくことになります(すでに看護師資格を持っている場合は、この項は読み飛ばして次の項へ進んでください)。
- 4年制の看護系大学で看護師資格と保健師資格を同時取得
- 3年制の看護師専門学校卒業後、1年制の保健師養成学校へ入学し保健師資格を取得
いずれにしても、看護師資格を持っていない人は、保健師の資格を取得するまで最低でも4年かかることを肝に銘じておきましょう。
看護系大学で看護師資格を取得する場合
4年制の看護系大学は「国公立」と「私立」両方ありますが、もし私立を選択した場合、入学金・授業料・学費を全て合わせると、卒業までに約500~700万の費用がかかります(学校法人によってかなり差があります)。一方、国公立の場合は4年間で計250万の費用で済みます。
そのため、できるだけ金銭的な負担をかけずに看護師資格を取得したい場合は、国公立を目指すか出来るだけが学費のかからない大学を探すと良いでしょう。
余裕のあるカリキュラムで学ぶことができる
4年制の看護系大学は、比較的余裕のあるカリキュラムが組まれています。特に1・2年生の間は実習もそこまで多くないため、バイトを沢山することもできますし、サークル活動などを楽しむこともできます。
保健師養成課程の受講が選抜の学校もある
看護系大学の中には保健師養成課程の受講が全員できるわけではなく「選抜」になっているケースもあります。選抜は通常、筆記試験で行われるようなのですが、これは一か八かの賭けにもなってしまいます。そのため「卒業後は必ず保健師として働きたい!」というのであれば、学部生全員が保健師養成課程を受講できる大学を受験しましょう。
看護師専門学校で看護師資格を取得する場合
4年制の看護系大学とは異なり、看護師専門学校は入学の敷居が低く、また学費も安いです。国公立の場合は3年間で約150万、私立の場合は約200万の費用でおさえることができます。
ただし、大学では4年間かけて行うところを、専門学校では3年間で終わらすわけですから、1年生の時からかなりカリキュラムが詰まっています。そのため、大学とは異なり空き時間でバイトをすることも難しいです。
結果的には看護系大学の費用と相違ない
看護師専門学校卒業後に通う保健師養成学校では、卒業後に約100万の費用がかかります。そのため総合的に判断すると、4年制の看護大学と費用はあまり変わらない可能性もあります。また、改めて学校に入り直すのも非常に面倒な話ですから、よっぽどの事情がない限りは4年制の看護系大学の方で一気にまとめて資格を取得することをオススメします。
2.フルタイムの仕事と保健師資格取得の両立は不可能
保健師になるためには実習が不可欠であるため、保健師の資格が取得できる学校は「全日制」のところしかありません(通信制の講座もありません)。基本的に、フルタイムの仕事と保健師資格取得の両立は不可能です。
そのため、保健師の資格を取得するにあたっては、皆さん以下の方法で生計を立てながら学校生活を送っているようです。なお、保健師養成学校の費用は、1年制が約100万・2年制は約200万だと考えておくと良いでしょう。
看護師の間に蓄えておいた貯金と奨学金を利用
一番多いのは、看護師の間に蓄えておいた貯金と社会人のための奨学金制度を利用するパターンです。特に1年制の学校に通う場合は、隙間時間でバイトをすることがほとんどできません。そのため、生活が問題なくできる程度の貯金と奨学金(または教育ローン)を駆使して、学生生活を送っているようです。
奨学金と教育ローンは積極利用しよう!
バイトをすることが難しく、家族からの援助が受けられないような場合には、奨学金や教育ローンを積極的に活用するようにしましょう。借金をするようで罪悪感を持つ人もいるようですが、学校卒業後に無事保健師として働くことができれば、返済にはそこまで苦労しないはずです。未来に繋がる「自己投資」だと思うようにしてください。
土日や夜間に、割のいいバイトを行う
貯金や奨学金だけでは生活がまわせていけなさそうな人、また2年制の養成学校に通う場合は、土日や夜間に看護師のバイトを行う人も多いです。看護師の単発求人はとても割のいいものが多く、特に夜間のバイトは1回で3~5万円ほど稼げるものも少なくありません。日中のバイトでも1日15000~17000円ほどは稼げますから、もしバイトをする必要があるのであれば、こうした割のいいバイトを看護師転職サイトで見つけるようにしましょう。
3.最短で保健師資格を取得できるのは「保健師養成学校」
看護師が最短で保健師資格を取得できるのは、1年制の保健師養成学校です。ただし、保健師養成学校は毎年減少傾向あり、今は運営されていたとしても数年後には廃止されている可能性があります。そのため、保健師養成学校で資格取得をしたい場合は、とにかく早めに行動にうつすようにしましょう。
なお、現在運営されている保健師養成学校の一覧は以下の通りです。(2016年12月現在)
- 早稲田医療技術専門学校/保健学科(埼玉県)
- 藍野大学短期大学/地域看護学専攻(大阪府)
- 北海道立旭川高等看護学院/地域看護学科
- 岩手県看護短期大学/地域看護学専攻
- 秋田県立衛生看護学院/保健科教育課程
- 栃木県立衛生福祉大学校/保健看護学保健学科
- 飯田女子短期大学/専攻科地域看護学専攻(長野県)
- 富山県立総合衛生学院/保健学科
- 名古屋医健スポーツ専門学校/保健学科
- 白鳳短期大学/地域看護学専攻(奈良県)
- 高知学園短期大学/地域看護学専攻
- 佐賀県立総合看護学院/保健学科
保健師養成学校がある地域は限られている
上記の一覧を見ていただくと分かるように、1年制の保健師養成学校は全国に12ヶ所しかありません。そのため、もし今お住まいの地域に養成学校がないようであれば、引っ越しを検討するか、諦めて4年制の看護系大学に編入するしかありません。
短期大学では4年制と同じ学士取得が可能
短期大学にある保健師養成学校を卒業した場合、4年制の大学卒業と同等の学士を得ることができます。そのため、専門学校を卒業した看護師の場合、こういった学校を選択すれば一石二鳥です。
「学士を持っている」というだけで、就職先が優遇されたり給与がアップしたりすることもありますから、選べるのであれば短期大学の保健師養成学校を選択しましょう。
4.じっくり学問を深めたければ「看護系大学」へ
2年間かけてじっくり保健師の学問を深めたい人は4年制の看護系大学を編入しましょう。1年制の保健師養成学校とは異なり、全国に学校がありますし、比較的余裕のあるスケジュールの中で学ぶことができます。もちろん、学費はこちらの方がかかってしまいますが、それなりにバイトをする時間もありますし、「もう一度、学生生活をエンジョイしたい!」という看護師には、とっておきです。
看護系大学なら選びたい放題!
看護系大学に編入するのであれば、基本的に学校は選びたい放題です。学校選びの際は、「合格率」に目を向ける人も多いですが、どこの学校も大体90%以上の合格率を誇っていますので、実際に選ぶ際は「立地条件」や「学費」を基準にして比較すると良いでしょう。また、学生生活を通して様々な人達と関わっていきたいのであれば、
看護の単科大学では、なく色んな学部がある総合大学がオススメです。
カリキュラムは1年制の保健師養成学校と変わらない
カリキュラムの内容については、1年制の保健師養成学校と特に変わりはありません。つまり看護系大学では、保健師養成学校が1年で学ぶことを2年かけて学べるということです。その場合、保健師の学問をより深く追求できますし、また余力があれば他のジャンルについても学ぶことができるでしょう。
5.保健師養成課程のカリキュラムについて
保健師養成課程のカリキュラム内容は、以下の通りです。
- 公衆衛生看護学(必須)
- 疫学(必須)
- 保健統計(必須)
- 保健医療福祉行政論(必須)
- 公衆衛生看護実習(必須)
このように、保健師養成課程は「実習」と「講義」によって構成されます。また、上記に挙げたのは必須科目ですが、この他に「歯科保健論」「保健栄養論」「日本国憲法」「情報管理論」などの選択科目を履修する必要があります(選択科目の内容は各大学による)。
養護教諭第2種免許・第一種衛生管理者の資格も取得できる
保健師養成課程では、養護教諭2種免許と第一種衛生管理者の資格も取得することができます。ただし、養護教諭2種免許の場合は、指定された科目を履修しないといけないため、もしこちらの資格を取得する場合には、選択科目の選択に注意するようにしてください。
しっかり勉強しないと試験には通らない
言う間でもなく、保健師資格は「国家資格」ですから、しっかりと勉強しない限り試験には通りません。生半可な気持ちで甘くみていると、簡単に落ちてしまいます。「看護師の時よりも覚える量が少なくて楽勝」などとは考えず、看護師の国家試験の時同様、最後の3ヶ月はしっかりと追い込みをかけていきましょう。
まとめ:計画的な準備が必要な資格!
保健師の資格取得は、他の資格と比較すると時間もお金もかかります。そのため軽い気持ちで挑戦することはできません。もし本気で資格取得を考えるのであれば、仕事の面でも生活の面でも、今から計画的に準備していくようにしましょう。
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