産業保健師は「残業がなくアフター5を満喫できる職業」だと思い込んでいる人は多いです。しかし、実際のところは、必ずしもそうとは限りません。あなたが勤める企業や、その時に抱えているプロジェクトによって、残業事情は異なります。
残業がない楽そうな仕事だからと、産業保健師になってしまうと「こんなはずじゃなかったのに・・・」という事態に陥ってしまいます。そこでここでは、企業で働く産業保健師の残業事情について詳しく解説していきますので、この仕事に興味を持たれている方はぜひ一読ください。
1.産業保健師でも毎日20~21時まで残業がある!?
産業保健師の就業時間は通常、「8時~17時」や「9時~18時」であることがほとんどです。しかし、企業によっては、17時や18時の定時で帰れることはほとんどなく、毎日20~21時まで残業せざるをえないところもあります。以下に、残業が多い企業の特徴についてまとめています。
- 企業の規模は大きいが産業保健師の数が1人
- 健康管理室を導入したばかりの企業
もちろん、これらの企業が全て、残業時間が多いわけではありませんが、実際に働いている産業保健師の声を聞くと、これらの企業は比較的忙しい傾向にあるようです。それでは、1つ1つ詳しく見ていきましょう。
2000人以上の社員を保健師が1人で見なくてはならない場合
産業保健師1人が担当する社員の人数は平均すると1000人~2000人であると言われています。また、企業ごとの産業保健師の配置数は、「1人」であるところが、半数弱を占めています。
一般的に考えれば、社員数が2000名以上いる場合は、2人以上の産業保健師を配置してもらいたいところなのです。しかし、企業の経営状態や上層部の健康管理に対する考え方が影響し、たとえ2000名以上いる社員がいる企業であっても産業保健師が1名しか配置されないケースは多々あります。
1人の保健師にかかる負担が大きい
産業保健師の仕事は、デスクワークと面談が大半ですが、2000名以上の社員の健康管理を1人で行うのは非常に負担が大きいことが考えられます。その結果、日々の残業が多くなってしまうのは当然のことかもしれません。
企業の中に健康管理室を導入したばかりの場合
最近では、労働者のメンタルヘルスに注目が集まっています。そのため、今までは健康管理室を導入していなかったとしても、新たに健康管理室を導入するケースも増えています。
そういった場合、今までのマニュアルなどもありませんので、赴任された産業保健師が一から仕組みを作っていかなければなりません。そうなると、産業保健師の人数などには関わらず、自然と仕事量は多くなることが考えられます。
2.抱えている仕事によって残業時間は変わる
産業保健師の残業事情は、その時に抱えている仕事内容によっても異なります。普段はあまり残業をするようなことはなくても、以下のような状況であった場合には、残業時間が多くなる傾向にあるようです。
- 健康教室の準備が必要な時
- 健診時期
- 個別フォローが必要な従業員が多い時
どんなに産業保健師の人数が足りていたとしても、何かしらの企画を抱えていたり、多くの従業員を個別フォローしなければならない時は、残業時間が増えます。つまり、産業保健師であっても、他の職種同様に、仕事の状況によって残業時間は左右されるのです。
健康教室の準備があると残業が増える
産業保健師の重要な仕事の1つが「健康教室」です。企業に勤める従業員の健康を維持する一次予防として、産業保健師は様々な企画(健康講話、禁煙プログラムなど)を準備していかなければなりません。大勢の社員に対して行われる一大イベントですから、入念な準備が必要であり当然残業時間も長くなります。
なかなか企画にOKが出ないことも・・・
産業保健師が主体となって行われる企画には、上司の許可が必要です。そのため、実際にその企画を運営する前に、上司に資料を提出したり、プレゼンすることがあるのですが、その際に毎回ダメ出しをされてしまい、結果、何日も残業せざるえない時があるようです。
健診時期の産業保健師は忙しい
通常、従業員の健診が行われる時期は、産業保健師は非常に忙しくなります。企業にもよりますが、健診時期の産業保健師は、健診センターの手配・健診場所の手配・当日の運営や管理・健診結果のチェック・要フォロー者の対応を全て行っていかなければならないからです。
個別フォローが必要な従業員が多いと業務が増える
従業員の中には、メンタル面において、産業保健師による個別フォローが必要なケースもあります。最近では、うつ病や適応障害、大人のADHDなどが問題になっており、このあたりの対応も産業保健師の重要な役割です。
例えば、うつ病の従業員の対応が必要となった場合は、産業医やその従業員の上司と連携を取り合い、対応にあたっていきます。もし、その従業員が、長期休暇を取得することになれば、復帰の際には、そのプログラムを考えていくのも産業保健師の役割です。よって、個別フォローが必要な従業員が増えれば、それだけ業務量が増え、残業にも繋がります。
3.産業保健師に「サービス残業」はない
産業保健師であっても、企業の状況やその時の仕事内容によって、残業があることをお伝えさせていただきました。ただし、産業保健師の場合、その残業が「サービス残業」になることは、ほとんどありません。福利厚生がしっかりしている大企業で働くのでれば、それは尚更のことです。
これまで、看護師として働いていたことがある人であれば、当たり前のようにサービス残業をこなしてきたはずです。その点、産業保健師は、残業分は残業代としてしっかり支払われるので、そこまで残業が苦にはならないかもしれません。
看護師・保健師の職場でサービス残業がないところは少ない
看護師にサービス残業が多いのは先に述べた通りです。そして、保健師の中でも、「行政保健師」はサービス残業が当たり前となっていることが多く、その点に不満を覚える声も聞かれたいます。
つまり、産業保健師は、看護師・保健師が働く職場の中では、比較的残業時間が少ない傾向にあり、かつ「サービス残業」がない、恵まれた職種なのです。
サービス残業がないのは企業で働く特権
病院や行政で働く保健師・看護師はサービス残業が多いにも関わらず、産業保健師にサービス残業がないのは、まさに企業で働く特権です。産業保健師になったメリットで「福利厚生」を挙げる人が多いのも納得がいきます。
残業代がもらえても残業をしたくない場合は?
残業代がしっかりもらえたとしても、家庭などの都合上、「私は絶対に残業をしたくない!」という人もいるはずです。そういった場合には、職場選びの時点で、残業が少なそうな企業を狙っていかなければなりません。また、その際には、転職サイトのキャリアコンサルタントに、勤務条件の希望を明確に伝え、内部事情をしっかり確認しておくようにしましょう。
まとめ:産業保健師は残業があっても働きやすい職種
産業保健師であっても、多かれ少なかれ、残業をすることにはなるため、必ずしも毎日アフター5が楽しめるとは限りません。もちろん、全くないところもあるはずですが、できるだけ残業をする覚悟で、産業保健師の転職活動を進めていってください。
また、本文でも述べた通り、いくら残業があったとしても、看護師や行政保健師ほどではありませんし、サービス残業もすることも、ほとんどありません。そのため、産業保健師が働く企業は、看護師・保健師の職場の中では、かなり「働きやすい」職場であることは事実です。
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[…] 産業保健師の残業については「産業保健師の残業事情とは?アフター5を満喫できるは嘘!?」 にも詳しく記載してありますので、必ず職場選びの参考にしてください。 […]