「地域で暮らす精神障害者の力になりたい!」そう考えて、保健師を志した人も多いのではないでしょうか。実際、地域で働く多くの保健師は「精神障害者の暮らし」を支えており、その中でも特に「精神保健福祉センター」で働く保健師は、地域の精神保健に大きく貢献しています。
ここでは、精神保健センターの機能や保健師の役割、またそこで働く方法についてご紹介していきます。地域の精神保健に深く携わっていきたいと考える保健師や、もちろん、精神保健福祉センターで働いてみたいと考える保健師にも、とても参考になる内容となっているため、ぜひ一読ください。
1.精神保健福祉センターの概要
精神保健福祉センターは、地域で暮らす精神障害者の社会生活を支えるために、地域の保健所や保健センターに対し、それに必要な技術指導や技術支援を行う機関です。また、地域精神保健福祉活動の拠点として、精神障害者らの当事者活動の支援や組織化のサポート、精神保健福祉に関する相談対応も行います。
各県、政令市に必ず設置してあり、地域によっては「精神医療センター」という名称のところもありますが、基本的に機能や役割はどこも変わりません。
精神保健福祉センターのスタッフ構成
精神保健福祉センターには、精神科医・臨床心理技術者・精神保健福祉相談員・作業療法士・保健師・看護師などの専門職が配置されています。職員数はセンターによって異なり、中には4~5人程度の少人数で構成されているところもあります。
なお、場所によっては、精神保健福祉相談員を置かずに一定の研修を修了した保健師が精神保健福祉相談員の代理となっているセンターもあるようです。
精神保健福祉センターが担う業務について
精神保健福祉センターは主に以下の業務を担います。
- 地域における精神保健福祉施策の企画・立案
- 関係諸機関に対する技術指導や教育研修の実施
- 精神保健福祉に関する知識の普及
- 精神障害者に関する正しい知識の普及
- 精神保健福祉活動に関する調査・研究
- 精神保健福祉相談(困難事例への対応)
- 家族会・患者会・社会復帰事業団体などの組織育成
- 精神医療審査会の審査に関する事務
- 精神障害者通院医療費公費負担及び精神障害者保健福祉手帳の判定
地域の保健センターや保健所が、精神障害者らに対する直接的な対人サービスを行うのに対し、精神保健福祉センターは、それらを全体的に管轄する役割を担っていることが分かります。
2.精神保健福祉センターで働く保健師の役割
精神保健センターで働く保健師は、一般の行政保健師らと比較して、ものすごく特殊な業務を行っているわけではありません。ただし当然のことですが、ここでの保健師業務は全て「精神保健」に関わるものです。保健所や保健センターのように、母子・乳幼児・成人・老年などの領域に携わることはありません。
では、精神保健福祉センターで働く保健師の主な役割について見ていきましょう。
精神障害者福祉に関する困難事例への対応
精神保健福祉センターで働く保健師は、地域の保健センターや保健所だけでは対応しきれない、精神障害者福祉に関する困難事例への対応を行います。具体的には、アルコール・薬物・痴呆・思春期にまつわる困難事例を扱うケースが多いようです。個人面談や家庭訪問などによって対応することもあれば、必要に応じて警察や児童福祉センターなどの関係諸機関に協力を要請することもあります。
保健所や保健センターとの連携が必須
精神保健福祉センターで扱う事例に関しては、保健所や保健センターから情報がまわってきますので、基本的に精神保健福祉センターで働く保健師は、これらの機関との連携も必須です。
精神保健福祉に関する実態把握
精神保健福祉センターでは、精神保健福祉施策の企画・立案を行うために、保健師らが精神保健福祉に関する実態把握を行うことになります。実際に地域で暮らす精神障害者やその家族、また患者家族会などのメンバーにヒアリングを行うなどして、精神保健福祉の発展には何が必要であるのかを考えていくのです。
よって、一般の保健師同様、精神保健福祉センターで働く保健師にも統計力・企画力・運営力が求められることが分かります(この事については、「保健師の仕事に求められる3つのスキルについて紹介します!」の記事も参考にしてみてください)。
患者家族会などの活動に対する援助・支援
地域で暮らす、アルコールの問題や薬物依存の問題、摂食障害、ひきこもりの問題を抱える精神障害患者やその家族らは、自助グループ・家族会などの活動によって互いに助け合っています。精神保健福祉センターで働く保健師は、そうした組織の結成や実際に活動をしていく上での援助や支援も行っていきます。
3.精神保健福祉センターで働く方法
精神保健に深く携わっていきたいと考える保健師の方は、ぜひ「精神保健福祉センター」で働いてみたいと思うでしょう。しかし、精神保健福祉センターで働く保健師になるのはそう簡単なことではありません。
冒頭でも少し述べた通り、精神保健福祉センターで働く保健師は、地域の保健所や保健センターから派遣されることになりますから、まずは、公務員試験を受けて行政保健師になる必要があります。そしてそこから、異動希望を出すなどして、その希望が運よく通れば、晴れて精神保健福祉センターで働くことができるのです。
ステップ1:まずは行政保健師になる
精神保健福祉センターの職員は、精神科医を除いて全員、公務員試験を受ける必要があります。保健師の場合は、まず、各自治体が募集する行政保健師の公務員試験に受かることが大前提です。おそらく、いきなり精神保健福祉センター勤務になることはないでしょうから、最初は属された保健所や保健センターで経験を積むことになります。
東京都保健師が一番狙い目?!
東京都には精神保健福祉センターが3ヶ所設置されています。そのため、精神保健福祉センターで働くチャンスを少しでも増やすためには、東京都保健師が一番の狙い目かもしれません。
ステップ2:精神保健福祉センターへの異動希望を出す
自治体にもよりますが、行政保健師は1~3年おきに人事異動があります。なお、異動に関しては、通るか通らないかは別として、個人の希望が聞かれますから、その際に、精神保健福祉センターへの異動希望を出すようにしましょう。
日頃から上司に意向を伝えておく
正直、精神保健福祉センターへ異動できるかどうかは「運」に任せるしかないところもあります。そのため、異動希望などを通し、日頃から上司に自分の意向を伝えておくことが肝心です。
また、もちろんのことですが、自身の意向を聞き入れてもらうためには、普段から仕事を真面目にこなし、人事権のある上司とも上手くやっていく必要があることは、一社会人として念頭に置いておきましょう。
まとめ:積極的にチャンスを掴む行動を!
一般の保健所や保健センターで働くにしても、精神保健の領域には必ず携わることになります。しかし、精神保健福祉センターでは、精神保健に関すること「だけ」しかやりませんから、地域の精神保健に深く携わっていきたいと考える保健師にとっては、ここで働けることは、またとないチャンスです。
もしどうしても精神保健福祉センターで働きたいというのであれば、上司に対して積極的にその旨を伝えていきましょう。運に任せていただけでは、いつその運が自分にまわってくるか分かりません。また、これから行政保健師になる人は、少しでもその確率を高めるために東京都保健師を受験すると良いかもしれません。このように、自ら積極的にチャンスを掴む行動を起こしていくようにしましょう。
ただし、精神保健福祉センターでなくても、保健師は充分、地域の精神保健に貢献しているのだということも念頭に置いておくようにしてください。
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