産業保健師は看護師・保健師の中でも圧倒的少数派であるため、自ら積極的に外部と接触していかなければ、他の企業で働いている産業保健師と繋がりが持てませんし、また新しい情報も入ってきません。
そうなると、どうしても仕事のやり方もワンパターンになりがちで、パフォーマンスも下がってしまいます。そんな事態を避けるためにぜひ知っていただきたいのが、ここで紹介する「日本産業保健師会」の存在です。
1.日本産業保健師会とは?
日本産業保健師会とは、企業で働く労働者の健康水準を高めるために、産業保健師の力量向上を目的として2008年に設立された職能団体です。
定期的に研修会や集会を開催し、産業保健師のスキルアップに繋げていく他、産業保健師同士の交流の場としても機能しています。2013年には一般社団法人を取得しており、現在に至るまで精力的な活躍を見せています。
日本産業保健師会の4つの目的
日本産業保健師会は以下の4つの目的を果たすために活動を展開しています。
- 産業保健師の実践活動の確立とさらなる充実
- 会員相互の情報交換、交流、研鑽の機会
- 職域で働く保健師の専門性を高める
- 産業保健師の社会的活動基盤を強化
上記の目的を果たし、まだまだ発展途上である産業保健師の力量向上に尽力しているのです。
日本保健師連絡協議会の構成メンバーでもある
日本産業保健師会は、優秀な保健師を育成することを目的として設立された「日本保健師連絡協議会」の構成メンバーでもあります。
なお、日本保健師連絡協議会は日本産業保健師会の他に「日本看護協会」「全国保健師長会」「全国保健師教育機関協議会」「公衆衛生看護研究会」「日本産業保健師会」の併せて6団体で構成されており、それぞれの機関と連携しながら活動を幅広く展開しています。
産業保健師同士の交流ができる貴重な場となっている
日本産業保健師会が設立されるまでは、企業の異なる産業保健師同士が意見交換や情報交換できる場は皆無に等しい状態でした。一方で、世間一般的には産業保健へのニーズが高まっている背景もあり、現在、日本産業保健師会は向上心の高い産業保健師達にとって非常に貴重な場となっているのです。
2.日本産業保健師会の活動内容について
日本産業保健師会の主な活動内は、産魚保健師活動の在り方・本質を考察する研修会や集会の開催です。
また、会員向けにニュースレターの発行も行っています。研修会ではその時々で一番タイムリーなものがテーマに取り上げられ、また自由集会では産業保健師としての在り方やキャリア形成などにおいて熱い議論が交わされています。
現場での実践に繋がる「研修会」
研修会では、産業保健師の現場での実践を重視し、最近特に話題となっている「ストレスチェックシート」や「メディアの活用法」などタイムリーなものを題材として取り扱っており、また工場見学などの機会を設けていることもあります。以下にこれまで研修会で扱われたテーマを一部紹介していますので、参考ください。
- ストレスチェックを現場の保健師活動に活かすために(2016)
- 私たち産業保健師の活動をうまく見せていくメディアの活用法(2015)
- メンタルヘルスにおいて保健師に期待すること~予防活動と困難事例対応~(2015)
- 産業保健師活動のあり方の本質に迫る「データヘルスと戦略的産業保健」(2014)
- 復職を通してつくる「お互いを支え合う」職場づくり(2013)
- 職場のエイジングと産業保健師の役割(2012)
なお、研修会の開催は年に3回、主に東京と福岡で行われています。
産業保健師の在り方を議論する「自由集会」
1年に1回行われる自由集会では、毎年約200名の産業保健師が集まり、産業保健師の未来や今後の在り方について議論が行われます。毎回、以下のようなテーマが決められ、それに沿ってそれぞれ置かれている立場から意見を出し合います。
- 産業保健師のキャリアを考える
- 産業保健師の原点から未来へ
- 産業保健師のキャリア形成の方向性
- 労働安全衛生法一部改正案の内容と今後の構想~メンタルヘルス対策について~
- 産業保健師活動のあり方の本質に迫るー広がり、つながる面接とはー
興味がある方は是非参加してみてください。
厚生労働省へ要望書の提出
日本産業保健師会では厚生労働省に対し、産業保健師の在り方や産業保健活動に関する要望書を作成し提出します。
直近では2015年に「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度における実施方法及び保健師の活用について(要望)」を、2013年には「事業場等における保健師の配置とその活用について(要望)」を厚生労働省労働基準局へ提出しています。
このようにして、国に対し産業保健活動の推進を促していくのも、日本産業保健師会の大切な活動なのです。
3.日本産業保健師会へ入会する方法
日本産業保健師会へ入会するのに、特に条件はありません。産業保健に関する業務に携わっている保健師や産業保健に関心のある保健師であれば誰でも入会することができます。
入会手続きは、他の学会と比較しても簡易的であり、また会員でしか得られない情報も多数あることから、産業保健に携わっていく保健師にはぜひ入会をおすすめします。
STEP1:公式ホームページで「入会申し込み」を記入し送信
まず、日本産業保健師会の公式ホームページ「入会案内・申し込み」から、入会申し込みフォームに飛び、必要事項を記入の上、送信します。必須の入力項目は以下の通りであり、入力自体は5分程度で終えることができます。
- メールアドレス
- 申し込み年月日
- 氏名
- 生年月日
- 所属機関
- 所属部署、部課
- 住所
上記がフォームに入力する情報になります。
STEP2:登録アドレスに「入会と会費納入について」が届く
申込みフォームで記載した登録アドレスにpdfで「入会と会費納入について」が届きます。その書面を確認の上、会費の納入手続きを行います。年会費は5000円であり、入金は入会申し込み後2週間以内に行う必要があります。
STEP3:入金確認後、本登録となる
入金が確認されると、会員番号が記載された内容のメールが届き、これで本登録となります。正式な会員となれば、ホームページ上で会員専用のページを閲覧することができ、ニュースレターなども送られてくるため、産業保健に関する最新の情報を入手することができます。
なお、万が一、退会する場合も同じページから手続きを行うことができます。
4.日本産業保健師会を活用するメリット
最後に、日本産業保健師会を活用するメリットを見ていきます。日本産業保健師会では、産業保健師に関する最新の知識を学ぶことができる上に、産業保健師としての「在り方」も考えられますから、企業で働く従業員にとても産業保健師自身にとってもメリットが満載です。詳しく見ていきましょう。
産業保健師同士の「横」の繋がりが作れる
日本産業保健師会を活用する最大のメリットは、産業保健師同士の「横」の繋がりを作れることではないでしょうか。産業保健師のニーズが増えてきたとはいえ、たった1人、大企業で奮闘している産業保健師もまだまだ多いです。
一応、同じ部署に相談できる上司が配属されているとは言え、同職種がいない心細さは想像をはるかに上回ります。
電話やメールですぐに相談できるような仲間が必要
そんな中でも、電話やメールですぐに相談できるような仲間を作っておけば、全て1人で抱え込まなくても済みますし、結果的に楽しく働き続けられることにも繋がるでしょう。
産業保健師としてのキャリア形成を考えられる
産業保健師は授業員からキャリア形成について相談される身ではありますが、本当は産業保健師自身だって自分のキャリア形成について悩んでいるはずです。
キャリアに関することは通常であれば上司に相談することになるのですが、産業保健師は職場内にそういった相談ができる相手がいるわけではないため、日本産業保健師会の自由集会を活用するべきなのです。
スキルアップした技術を従業員に還元できる
日本産業保健師会は、産業保健師がスキルアップできる環境でもあります。最新の情報が入ってくる上に、研修会では多くのことが学べ、ここでスキルアップした技術を従業員に還元することができます。
産業保健師の仕事の成果は数字としては見えにくいものですが、こうして「従業員の力になれた」と実感することができれば、それは大きなやりがいにもつながっていくはずです。
割引価格で研修を受けることができる
日本産業保健師会が開催する研修会や自由集会を割引価格で受けられることも嬉しいメリットの1つです。
例えば、2017年2月18日に行われる「健康経営における産業保健師の役割を考える」の研修会では、非会員だと5000円の費用がかかりますが、会員の場合は2000円で受けることができます。
今後、産業保健の分野でキャリアを積極的に積んでいきたいと考える人にとっては特に、絶対に損はないはずです。
まとめ
産業保健師は、看護師や保健師と比較すると、まだまだ働き方を模索し続けなければならない発展途上の職種です。だからこそ、やりがいがあるとも言えるのですが、その一方、1人で全てを抱えこんでしまいやすい性質もかねています。
従業員を元気にしていくためには、まずそれを支える産業保健師自身が元気であることが必須です。自分自身が長く楽しく働き続けていくためにも、ぜひ日本産業保健師会を活用してみてください。
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