市町村の保健センターでは、乳幼児健診を実施しており、保健師が中心となって業務を担当します。
ここでは、乳幼児健診の業務を担当する保健師に求められるスキルやメリット・デメリットなどをご紹介します。
1.市町村が実施する乳幼児健診について
乳幼児健診とは母子保健法で定められており、市町村が実施する乳幼児の健診のことです。
以下で、年齢別の健診内容や健診当日の流れについてご紹介します。
(1)年齢別の健診内容
まず、乳幼児健診における4か月、1歳6か月、3歳6か月のそれぞれの健診内容についてご説明します。
4か月児健診の内容
4か月児健診では、首の座りや耳の聞こえ方、追視といった発達のチェックをします。
また、先天的な疾患の有無や肌の状態などをチェックします。
1歳6か月児健診の内容
1歳6か月児健診では、一人歩きができる頃であるため歩行状態の確認をします。
また、ことばを話し始める時期でもあるため、発語の有無や話せる単語の確認をします。指さしができるかチェックします。
3歳6か月児健診の内容
3歳6か月児健診では、社会性が身に付く時期であるため、人とのやり取りの仕方や精神面での発達を確認します。
名前を尋ねられて答えるか、といったところも見ます。また、視聴覚の検査もします。
(2)乳幼児健診当日の流れ
乳幼児健診当日は、大まかに次のような流れとなります。
- 受付
- 問診
- 身体計測
- 歯科診察(4か月児健診は除く)
- 医師診察
- 栄養相談
- 事後指導
- 必要時育児相談
身体の状況や栄養状態、発達の面を見て、必要な場合は適宜保健指導が入ります。
保護者が持参した母子健康手帳を基に情報を収集したり、問診票に記載されている内容を再度問診したりします。また、予防接種に対する指導もあります。
2.乳幼児健診の保健師に必要なスキル
ここでは、乳幼児健診を担当する保健師に求められるスキルについてご説明します。
(1)臨機応変に対応するスキル
乳幼児健診を担当する保健師には、柔軟に対応するスキルが求められます。
健診当日は、決められた時間に大勢の親子が訪れます。
全体に目を配る必要がある
保健師は乳幼児健診の主担となるため全体に目を配り、スムーズに健診が流れているか、滞っている場所がないか常に確認します。
健診は待ち時間も多いためクレームも出ます。保健師はそういった場面にも、臨機応変に対応する必要があります。
(2)他職種と連携する調整力
乳幼児健診は、保健師だけなく他の専門職種がいなければ成り立ちません。
そのため、医師・歯科医師・看護師・栄養士・心理士・ボランティア等と連携を図り、スムーズに健診をすすめる調整力が保健師に求められます。
事前に派遣を依頼する
保健師は、事前に医師会・看護師会といった団体へ乳幼児健診への派遣を依頼します。
その他、問診票用紙の変更等があれば事前に他職種に伝達します。
(3)保護者とのコミュニケーション力
健診では子育てに関する悩みを抱えた保護者も来場します。
保健師は保護者に対し問診を取る業務を担当しますが、その貴重な時間を無駄にせず、子どもに対する困っていることや育児に対する不安等を話してもらえるようなコミュニケーション力が必要です。
子育てに関する悩みなどを聞き取る
保護者との会話の中で、子育てに関する悩みや母子を取り巻く育児環境についても聞き取ります。
育児に悩みが多かったり、子どもの発達に偏りが見られたりする子どもへは必要時、心理士による発達検査を受けてもらう場合があります。
また、医師の診察で異常がみつかれば、医療機関へ受診してもらう必要があります。
子どもの異常を発見されることは苦痛であることを理解する
保護者にとって、健診で子どもの苦手な部分を指摘されたり、異常を発見されたりすることは非常に戸惑い苦痛を伴うということを理解しておく必要があります。
そして保健師に対して嫌悪感を抱いたり、憤慨したりする保護者も実際にいます。
そのような時、保健師が保護者に対し、検査を受けることや医療機関を受診する必要性を十分説明し、保護者の理解を得るようなコミュニケーション力が大切です。
(4)虐待などの異常を見極める判断力
乳幼児健診において、保健師はどの子どもに対しても虐待の有無を確認します。
身体測定や医師の診察で子どもの衣服を脱がせる機会に、すかさず体にあざややけどの跡がないかチェックして、虐待の早期発見に努めます。
心理的虐待・ネグレクトの有無も確認する
保健師は身体面だけでなく、子どもに対する保護者の態度や子どもの様子を常に観察し、虐待の早期発見に努めます。
身体の傷や痣といった身体的な虐待だけでなく、暴言を吐いたり育児放棄したりするネグレクトのような虐待もあります。
子どもが保護者に対して怯えた様子を見せないか、といった観察も大切になります。
ポイント!
疾病の兆候はないかを確認することも重要です。異常があれば医師と連携を図り医師診察の場所でしっかり診察をしてもらうようにします。
時には医療機関と連携を図り、子どもにとって必要な検査や受診がスムーズに行えるようにします。
3.乳幼児健診を担当する保健師のメリット
乳幼児健診は、子ども好きの保健師にとって大変魅力的な業務です。私の上司は乳幼児健診の業務が好きな人が多かったです。
子どものパワーに癒されて仕事を頑張れる
赤ちゃんから幼児まで大勢の子どもたちが集まるとにぎやかです。騒がしい反面、とても無邪気でかわいく感じます。
子どものパワーにとても癒されて、他の仕事をまた頑張ろうと思えてきます。
子どもの成長を見届けることができる
乳幼児健診では赤ちゃんだった生後4か月から3歳6か月まで実施しているため、担当する保健師は子どもの成長がよくわかるということがメリットとして挙げられます。
その子がどういった経過をたどって成長したのかを見届けることができるのは喜ばしいものです。
4.乳幼児健診を担当する保健師のデメリット
一方、子ども好きの保健師であっても、乳幼児健診を担当するデメリットはあります。以下で詳しくご紹介します。
慌しく時間配分に気を遣う
乳幼児健診の現場では慌ただしく、保健師は非常に時間に追われる業務となることがデメリットとして挙げられます。じっくり保護者と話ができないこともあります。
保健師は問診や保健指導を担当しますが、医師や歯科医師の診察はもちろん、栄養士の指導や看護師の計測など、決められた時間内に健診をすべて受けてもらわなければならないのです。
虐待の早期発見への責任は重い
乳幼児健診を担当することは、虐待の早期発見にもなるため責任重大です。保健師にとってやりがいのある仕事ではあるものの、負担となってしまうことがデメリットのひとつです。
万が一地域の子どもや保護者に虐待などの問題が発生した場合、健診では一体どうだったのか、異常の早期発見に努めることができていたのかが保健師に問われます。
健診を未受診であったなら、事後訪問をするなどの対応が必須となります。
まとめ
乳幼児健診は、とてもやりがいがあり、子どもが好きな保健師には魅力的な業務です。
しかし、乳幼児健診を受けていない未受診の家庭の対応に追われるといった、健診の場だけでなくその後フォローが必要な家庭も多く、業務は複雑になります。
どんな家庭とも柔軟に関わり、適切な判断ができるスキルが必要であることを覚えておきましょう。
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