行政保健師の仕事の本質を知るには、既にそこで働いている現役の方の「悩み」が非常に参考になります。
求人情報などに掲載されている情報は、どちらかというとその仕事のポジティブな面ばかりに焦点が当てられています。しかし、ご存知の通り、仕事というのはそういったポジティブな要素だけで成り立っているわけではありません。同じくらい、ネガティブな要素もあるものです。
だからこそ、転職前に、そこで実際に働いている人の「悩み」を知っておくことが大切なのです。そしてそれは、その仕事に対するあなたの覚悟が決まることにも繋がります。
ここでは、現役の行政保健師が抱えるリアルな悩みを5つご紹介致しますので、現在、行政保健師への転職を検討されている方はぜひ、参考にしてみてください。
1.事務作業が非常に多いという悩み
2.成果が見えづらいという悩み
3.予期せぬ人事異動があるという悩み
4.仕事の幅が広すぎるという悩み
5.相談できる人がいないという悩み
まとめ:やりがいも悩みも両方あるのが仕事
1.事務作業が非常に多いという悩み
多くの行政保健師が、「事務作業が想像以上に多くて大変!」と口を揃えて言います。行政保健師と言えば「地域住民との交流」がメインの仕事だというイメージが強いのですが、実際は事務作業の方がメインとなりがちなのです。
また「本庁に勤務する行政保健師の特徴3つ!市町村勤務との違いとは?」にもありますが、本庁勤務となった場合には更にその傾向が強く、地域住民との交流を楽しみにしていた人は、想像とのギャップに悩まされることも多いようです。
行政保健師の一日は書類作成と電話対応で終わることもある
地域住民に方に対し、健康診断・予防接種・健康教室などを提供するのが行政保健師の役割ですが、そこに至るまでには企画書の作成から各関係機関との連携といった入念な下準備が必要となります。そのため、行政保健師はの一日は、書類作成と電話対応だけで終わることもあります。
特に、行政保健師は「コーディネーター」としての役割が求められる場面も多いですから、「午前中は電話しかしていなかった・・・」なんてこともざらにあるようです。
事務作業とは切っても切れない関係
企画が終わったら、次は「報告書の作成」が待ち受けています。このように、行政保健師の仕事は最初から最後まで事務作業と切っても切れない関係にあることが分かります。
事務作業が終わらず残業することも多い
「行政保健師は定時に来て定時に帰れる」といったイメージを持っている人もまだまだ多いでしょう。しかし、実際のところは、それは迷信だと言わざるえません。なぜなら、行政保健師の多く(特に正職員)は、毎日のように残業して事務作業を行っているからです。さらに、その残業は「サービス残業」となってしまうことも多いようです。
2.成果が見えづらいという悩み
行政保健師の仕事は集団を対象としているため、1対1で患者に接する看護師らと比べると「成果が見えづらい」という特徴があります。また、行政保健師が、企画などに関する成果を確認するのには「数値データ」をあてにすることになり、地域住民から直接反応を得られることは少ないのです。そのため誰かの役に立っているという実感が得られず「やりがい」を見出せないという声も聞かれます。
地域住民の「役に立っている」実感が得られない
どの仕事においても「誰かの役に立っている」というのは、その仕事を続けていく上でのモチベーションになります。しかし、自分が行ったことに対して、なかなか成果が見えづらい行政保健師は、「役に立っている」という実感が得られにくいのです。その結果、行政保健師の仕事にやりがいを見出せず看護師に戻った人もいます。
すぐに成果を求めるタイプの人には向かない
行政保健師は地域住民に対し、一次予防を中心に行っていくことになるため、成果が見えづらいのはどうしようもないことです。そのため「すぐに成果が欲しい!」「直接ありがとうと言われることに、やりがいを感じる!」といったタイプの人にはあまり向いていない職種なのかもしれません。
行政保健師は「縁の下の力持ち」
看護師の仕事は誰でも知っているにも関わらず、行政保健師の仕事について知らない人は多いものです。なぜなら、保健師は地域住民にとって「縁の下の力持ち」といった立ち位置になっているからです。
行政保健師として働くのであれば、そのことに対し卑屈になるのではなく、むしろ誇りを持って働くべきなのです。
3.予期せぬ人事異動があるという悩み
行政で働くにあたり、予期せぬ人事異動があることは、受け入れなけれなりません。通常、行政保健師は3年単位で異動を命じられることが多いようなのですが、中には1年しか働いていないにも関わず突然、異動を命じられることもあるようです。
また、市町村勤務を希望していたのに本庁勤務になってしまったり、保健所勤務を希望していたのに市町村管轄の高齢者向け施設に異動させられてしまうこともあります。
移動の場所や時期は自分で選べない
行政保健師も、病院看護師同様に異動希望は一応出せるようです。しかしその希望が必ずしも通るとは限りません。また同様に、異動の時期についても、自身で選ぶことはできません。
結婚・妊娠・出産などの事情が絡む場合は話が別になるかもしれませんが、基本的には、異動については上の辞令に従うしかないということを念頭に置いておきましょう。
異動頻度がまちまちでいつ異動になるか分からない
行政保健師の中には1年で異動が命じられてしまう人がいます。その一方、10年以上、同じ部署で働き続ける行政保健師もいるようです。
事情は自治体によって全く異なりますが、その部署によって欠かせない存在となってしまった場合は、「異動したくても、なかなか異動させてもらえない!」ということがあるのかもしれません。
4.仕事の幅が広すぎるという悩み
行政保健師の対象者は「地域住民」ですから、母子・精神・老年・成人など全ての分野に関わっていかなければなりません。病院の看護師などと比較すると、圧倒的に仕事の幅が広いのです。
そのため、「広く浅く」といった事態にならないよう、自身で配慮しながら働いていかなければなりません。そして、「この分野は苦手・この分野は得意」などと言っている場合ではないのです。どの分野に対しても苦手意識を持たず取り組んでいく必要があります。
規模が小さい地域では1人の保健師が全ての領域を担う
規模が小さい地域では、保健センターなどに配置されている保健師の人数も非常に限られていますから、1人の保健師が全ての領域を担っていかなければなりません。
一方、東京都23区や政令都市などの規模が大きい地域では、配置されている保健師の人数も多く、母子担当・精神担当・高齢者担当などと、役割分担がなされていることが多いです。
行政保健師に求められるのは「ジェネラリスト」
幅広い分野に携わっていかなければいけない保健師ですから、いわゆる「専門性を極める」ことは難しい職種であり、求められるのはジェネラリストです。特に、これから保健師として出世していきたいと考えのであれば、全ての分野において深めることができるよう意識して働くべきでしょう。
5.相談できる人がいないという悩み
行政保健師は離島勤務とはならない限り「1人職」ではありませんが、多くの人が「相談できる人がいない」という悩みを抱えています。なぜなら、各担当には1人ずつの保健師しか割り当てられず、その時に同じ仕事をしている保健師が他にいないからです。
不安なことは、他の担当の保健師にも相談したいものですが、みんなそれぞれ自分の仕事に手一杯な状態であるため、なかなか相談しづらい環境となってしまっているようです。
基本的に仕事は1人で回さなければいけない
基本的に自分の仕事は自分1人でまわしていかなければならない行政保健師ですが、もちろん、1人ではどうしようもないことも多々出てくるでしょう。そんな時、独断で仕事を進めていくのはリスクが高いことですから、もし分らないことや困ったことがあったら、他の保健師や上司に相談を持ちかけるようにしましょう。
「仕事だから仕方がない」と割り切って
何でもかんでも1人で抱え込む必要はありません。時には、嫌な顔をされてしまうこともあるかもしれませんが「仕事だから仕方がない」と割り切って相談していくようにしましょう。
規模が大きい地域を受験するのがオススメ!
臨床経験が少ない人は、保健師が複数人いるようま規模が大きい地域を受けるようにしましょう。いくら相談しづらい環境であると言っても、同じ職場に、他の保健師がいる限りは、最低限相談しなければいけないことは、相談することができます。
島勤務や規模が小さい地域の「1人職」の現場は注意
島勤務や非常に規模が小さい地域の場合は、本当に「1人職」となってしまうため、そうもいきません。何かあったら、他の場所で働く保健師に電話などで確認していかなければならないのです。それだとタイムリーにことが運んでいかないため、さらに悩みを抱えることになってしまいます。
まとめ:やりがいも悩みも両方あるのが仕事
現役の行政保健師が抱えるリアルな悩みについてご紹介させていただきました。このように、行政保健師の「ネガティブな一面」も知ることで、より一層、この仕事の本質が見えてきたのではないでしょうか。どの仕事をするにしても、良いことばかりがあるわけでもなければその反対もしかりです。つまり、やりがいも悩みも両方あるのが「仕事」なのです。
そして、最初にも述べた通り、事前にその仕事のネガティブな面を知っておくことは、仕事への覚悟が決まることにも繋がります。覚悟が決まれば、新しい職場に行っても、何とかやりがいを見出しながらやっていけるものです。ここに書いてあることを念頭に置き、行政保健師を志した頃の気持ちを忘れずに、ぜひこの仕事をモノにしていってください。
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