行政保健師として働く場合、通常は、保健所もしくは保健センターで勤務することになります。保健所と保健センターは混同されがちですが、全くの別物であり、保健所には保健所の、保健センターには保健センターのそれぞれの役割があます。また、なるための方法も異なるのですが、そのことについて知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
もしあなたが行政保健師として働くことを考えているのであれば、当然、保健所と保健センターの役割などについて知っておくことは非常に大切なことです。
そこでここでは、保健所と保健センターでの保健師の役割・なるための方法の違いについて詳しく解説していきます。
1.保健所保健師の役割となるための方法
まずは、保健所保健師の役割となるための方法について見ていきます。そもそも、地域の中で保健所はどのような機能を果たしているのか知っているでしょうか。最初にも述べた通り、保健所は保健センターと混同されがちなのですが、そこには明確な違いがあるのです。
保健所は二次予防を行う機関
保健所とは、都道府県・東京都23特別区・政令都市にて設置される保健機関です。保健所は、基本的に二次予防を行ってきます。以下に実際に行われている二次予防についてまとめています。
- 感染症の相談・検査
- 飼い犬の登録・狂犬病予防
- 害虫の駆除
- 水質調査
- 食虫毒の予防
- 医薬品や劇物の販売業の許可
保健所には他職種が在籍している
上記にもあるように、保健所は非常に広範囲な分野について扱っていかなければならないため、保健師の他にも医師・栄養士・診療放射線技師・臨床検査技師・獣医師・薬剤師・精神保健福祉相談員・理学療法士・作業療法士など多職種が在籍しています。なお、原則として医師が所属長になるよう定められています。
保健所保健師は広範的かつ専門的な業務を行う
都道府県の管轄となる保健所保健師は広範的な業務を担っていくと共に、市町村管轄の保健センターでの対応が困難となったケースを扱うことがあります。
未熟児・発達障害者・HIV患者など専門的知識が必要な場合も
未熟児・発達障害者・HIV患者への対応などがそれにあたります。ただし、重度の精神障害を持つ患者の場合は、保健所と保健センターでの線引きが難しいようで、ケースバイケースとしているようです。
直接的な対人サービスよりも事務作業が多い
保健所保健師は地域住民に対する直接的な対人サービスよりも、どちらかと言うとケアシステムの構築やマニュアル作り、施策の策定や運営・管理など事務作業の方が中心となります。
保健所保健師になるための方法
保健所保健師になるには、保健師資格を持っていることが最低条件です。基本的に保健所保健師と保健センターの保健師とでは雇用者が異なるため、保健所保健師になるには保健所が募集している求人に応募し試験を受ける必要があります。
東京都23区と政令指定都市は例外
東京都23区や政令指定都市の区や市では、区・市を1つの単位として保健所と保健センターを配置しているため、試験も一括されており、受かってから自分がどちらに配属されるかが分かります。もしかしたら、面接の際にどちらの配属を希望するか聞かれることもあるかもしれませんが、その希望が通るとは限りません。
希望する部署に配置されなくても異動のチャンスはある!
希望する部署に配置されなかったとしても、一度公務員試験にさえ受かってしまえば、異動願いを出すことによって、1~2年後に必ずチャンスがめぐってきます。なぜなら、行政保健師らは1~2年おきに人事異動が行われているからです。もし、希望する部署に配置されなくても、あまり気落ちせず、目の前の業務をしっかりこなしながら上司に好印象を与え、チャンスを狙うようにしましょう。
2.保健センターの保健師の役割となるための方法
次に、保健センターについて見ていきます。後に詳しく説明していきますが、保健センターは市町村に帰属する機関であるため、保健所よりも扱う範囲が狭く、地域住民と直接触れ合う機会が多いのが特徴です。
どちらが「上」でどちらが「下」というわけではないですが、保健センターが「行政機関」のイメージが強くなるのに対し、保健センターはより地域住民に密着した立ち位置となります。
保健センターとは一次予防を行う機関である
保健センターは市区町村によって設置された医療機関であり、市町村単位での地域の「健康づくり」を担っています。二次予防を行う保健所とは異なり、保健センターは一次予防を行う機関です。以下に一次予防の例をまとめています。
- 保健指導
- 小児予防接種
- 乳幼児健診
- 健康相談
- 成人病検診
- がん検診
- 新生児訪問
保健センターは保健師が中心となって機能している
保健センターには、保健師の他に看護師・栄養士などが在籍していますが、基本的には保健師が中心となって機能しており、また所属長が医師である必要はありません。
保健センターの保健師は地域住民に密着し「健康づくり」を行う
上記でも述べた通り、保健センターでは地域住民1人1人に対し健診や予防接種、自宅訪問などを行っていきます。そのため、そこで働く保健師は、保健所保健師よりも地域住民に密着しながら、彼等の「健康づくり」をサポートしていくことになります。
保健所と連携を取り合う場面も多い
このように、保健所保健師と保健センターの保健師では、明確な役割分担がなされていることが分かります。また、普段は別の場所で別の業務を行っていたとしても、業務を円滑に進めていくために、互いに連携を取り合う場面が多いことも念頭に置いておきましょう。
保健センターの保健師になるための方法
保健センターの保健師になるためには、保健所保健師と同じく保健師資格を保有していることが大前提となります。保健センターの保健師は「市の職員」になるため、それに準じた公務員試験に受かる必要があります。
そして、前項でも述べた通り、東京都23区と政令都市以外であれば、最初から「保健所」にするか「保健センター」にするかを選択することができますが、上記の区や市に該当する場合は選択できません。
必ずしも保健センター勤務になるとは限らない
どの保健センターに採用されたとしても、その保健センターが保有している高齢者施設や県施設に配置されてしまう可能性があることも念頭に置いておきましょう。
まとめ:役割の違いを知っておくことが大切
保健所と保健センターは、そもそも担っている役割が異なることから、当然そこで働く保健師の役割も異なってきます。自治体によっては、どちらで働くのかを選べないことがネックではありますが、実際に働くとなると、双方で連携する機会も多いですから、やはりこれらの違いについて知っておくことは重要です。
繰り返しになりますが、双方の最大の違いは、保健所保健師の方が保健センターの保健師よりも「広範的かつ専門的」な業務を行うという点です。どちらが「上」どちらが「下」ということはないですが、保健師によって向き不向きがあることは否めないでしょう。
なお、行政保健師になるための公務員試験対策については「保健師公務員試験の流れと試験対策方法について」の記事をご参照ください。
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