行政保健師は、市町村勤務になるか本庁勤務になるかで役割が異なります。しかし、行政保健師というと、通常、「市町村保健師」の方をイメージされるケースがほとんどであり、本庁の市町村の役割について知っている人はあまりいません。しかし、行政保健師の試験に受かった後は、実際どちらに配属されるか分かりませんので、行政保健師を目指す人は、この両方の役割についておさえておいた方が良いでしょう(行政保健師の試験については「保健師公務員試験の流れと試験対策方法について」の記事をご参照ください)。そこでここでは、本庁に勤務する保健師の特徴について、市町村保健師との違いを踏まえて解説していきます。
1.本庁の保健師の仕事内容・保健師らしくない!?
2.市町村保健師よりも「読解力」と「文章力」が求められる
3.本庁の保健師は毎晩のように残業がある
まとめ:社会を良くしようという姿勢が大切
1.本庁の保健師の仕事内容・保健師らしくない!?
本庁に勤務する保健師は、市町村保健師のように地域住民に接する機会が少なく、管内市町村保健師の連携役などを勤めることから、事務や調整の仕事が多くなるのが最大の特徴です。そのため地域住民と直接交流しながら、地域医療に貢献していきたいと考えていた保健師からは、本庁の保健師の仕事内容を知って「ガッカリしてしまった」という声も聞かれています。
行政・福祉サービスの基盤作りに関わる
市町村保健師は、既に決められている施策を実行していくのに対し、本庁の保健師はそれらの施策の基盤作りの方がメインの仕事となります。具体的には、施策や所属・配属先に応じた活動の推進、活動指針の策定周知と地方公共団体における活用を行っていきますので、必然的に事務仕事が多くなってしまうのです。
管内市町村保健師の連携役を勤める
市町村保健師が、本庁で定められた施策をスムーズに実行できるために、本庁の保健師は、管内市町村保健師の連携役を勤めることになります。そのため、保健師の活動を推進するための方策を実施し、保健師が目指すべき基本的方向性に基づく活動の展開を行っていきます。
「対住民」ではなく「対保健師」の仕事が多い
本庁の保健師の仕事は、施策作りや施策を実践する保健師のサポートにまわることになるため、「対住民」ではなく「対保健師」の仕事が多くなるのです。そのため、本庁の保健師の仕事は「保健師らしくない」と思われることが多いのです。
2.市町村保健師よりも「読解力」と「文章力」が求められる
上記にも述べたように、本庁の保健師は施策の策定がメインの仕事となるため、国からの通知を読み込んだり施策の文章を書くことが求められます。そのため、実践レベルで業務を行う市町村よりも「読解力」と「文章力」が必要となってくるのです。読解力や文章力にあまり自信のない保健師にとっては、慣れるまで、本庁の仕事が非常に大変に感じるかもしれません。
国からの通知や法律を読み込む必要がある
本庁で作られる施策は、国の通知や法律に乗っ取った形で作られることになります。そのため、本庁の保健師は国が作成した資料をしっかり読み込んでいかなくてはならないのですが、そのような資料はは非常に難解な言葉が並べられていることが多く、他の資料と比較して読解が難しいことが多いのです。本庁の保健師に「読解力」が求められるのはこういった背景があるからです。
議事録やマニュアル作成の機会が多い
本庁の保健師は「読解力」と同様に「文章力」も求められます。なぜなら、市町村の保健師よりも議事録やマニュアル作成の機会が多いからです。本庁の保健師が作成した文章は、のちのち、大勢の人達に読まれることになりますから、誰にとっても分かりやすい表現が出来るようにならなければなりません。
本庁の保健師が作成するマニュアルの例
実際、本庁の保健師は以下のようなマニュアルを作成することになります。
- 大規模災害発生時のシステム
- 災害時など緊急情報の周知システム
- 保健師の現任教育体系
このようなマニュアル作成に携わる限りは、保健師1人1人に読解力と文書力が必要であると言えます。
3.本庁の保健師は毎晩のように残業がある
実際に本庁で働いている保健師の方々から話を聞くと、皆さん口を揃えて「仕事が忙しく残業が多い」と言います。予算のやりくりから施策の策定まで多くの役割を担うのが本庁の保健師ですから、忙しいのも仕方がないことなのかもしれません。
市町村保健師も、自治体や地域によっては非常に忙しいケースがあるようですが、総合的に比べると、本庁の保健師の方が忙しく毎晩のように残業があるのは「当たり前」になっているようです。
毎晩21時過ぎまで残業する保健師もいる
本庁で働く保健師は、毎晩21時過ぎまで働くことも珍しくないようです。看護師と比較すると、保健師は、夜勤がないため「体力的には楽」だと思われがちですが、そこまで残業が続くと、一概に「看護師よりは楽」だとは言えません。実際、毎晩続く残業に、精神的に限界が来てしまい「もう辞めたい」と嘆く保健師もいます。
本庁の保健師はサービス残業が当たり前?!
本庁の保健師はいくら残業をしても残業代が支払われないケースが多いのです。激務な上に、サービス残業が続くようでは、よっぽど高い志がない限り、そう長くは続かないのも無理ありません。ただし、残業代の支払い状況は、自治体によって異なることは、念頭に置いておいてください。
緊急事態が起こった際には職場に泊まりこともある
自分が勤めている地域で、自然災害などの緊急事態が起こったような時は、本庁の保健師は職場に泊まり込みで職務にあたることになります。各市町村の指揮をとっていくのが本庁の役割ですから、市民の安全を第一に考え、本庁は寝る間も惜しんで働いていかなければならないのです。
このように、本庁の保健師は、毎晩のように残業し、時には泊まり込みでその職務にあたっていくことが求められるわけですから、保健師自身に強い正義感がなければ務まらない可能性もあります。
まとめ:社会を良くしようという姿勢が大切
市町村の保健師は、行政・福祉の施策を、直接、地域住民に提供していきますが、本庁の保健師はそれらの施策を作り上げることがメインの仕事となり、そういった点が双方の最大の違いだといえます。
残念ながら、本庁勤務になるか、市町村勤務になるかは、自分で選べるわけではありません。そのため、市町村勤務を希望して人が本庁勤務になると、非常にショックを受けることが多いようです。しかし、行政保健師は数年に1回は異動がありますし、ずっと同じ場所で勤務するわけではありません。また、「社会を良くしようという」姿勢があれば、いくらでも楽しみや、やりがいを見出せる仕事であることを憶えておきましょう。
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[…] また「本庁に勤務する行政保健師の特徴3つ!市町村勤務との違いとは?」にもありますが、本庁勤務となった場合には更にその傾向が強く、地域住民との交流を楽しみにしていた人は、想像とのギャップに悩まされることも多いようです。 […]