行政保健師から産業保健師に転職するのには「覚悟」が必要です。なぜなら、行政保健師と産業保健師は雇用形態も仕事の特徴も異なるため、何も知らず覚悟がないまま転職してしまうと「こんなはずじゃなかった。」と後悔してしまうことになるからです。
そこでここでは、行政保健師から産業保健師へ転職する際にぜひおさえておいてほしい注意点をご紹介させていただきます。現在、産業保健師への転職を検討されている行政保健師の方は、ここに書いてあることを踏まえ、覚悟を決めた上で転職活動に踏み切るようにしてください。
【目次】
1.産業保健師は行政保健師よりも雇用が安定しない
2.産業保健師の上司は「事務職」であることが多い
3.産業保健師は行政保健師より幅広い知識が求められる
4.産業保健師になることで年収が下がる可能性がある
5.産業保健師の求人数は非常に限られている
まとめ:「行政保健師の座」を捨てる覚悟はありますか?
1.産業保健師は行政保健師よりも雇用が安定しない
産業保健師と行政保健師の最大の違いは「雇用条件」にあります。行政保健師は「公務員」ですから、正職員であろうとパートであろうと基本的に雇用が安定しています。よっぽどのことがない限り、クビになることもなければ減給になることもありません。
しかし、産業保健師はその企業に務める「会社員」ですから、たとえそこがどんなに大企業であっても、公務員のように「雇用が安定しない」ことは充分に念頭に置いて、転職活動を進めるようにしていきましょう。
産業保健師はクビになることもある?!
医療従事者の不足が叫ばれる現代において、産業保健師のような医療職がクビになるようなことはあまり想像ができないかもしれません。しかし、「一般企業」は公的機関と異なり倒産する可能性も少なからず秘めています。
そのため、もしその企業が「倒産」という事態に見舞われようものなら、当然、産業保健師はクビになり職を失うことになります。実際、企業が倒産し、ある日突然クビになってしまった産業保健師もいるので他人事にはなりません。
企業の業績に給料が左右されることもある
上記の話にも通じることですが、産業保健師の給料は企業の業績によって左右されることがあります。そのため、勤める企業によって給料も異なりますし、企業の業績が傾けば月収やボーナスが下がることも考えられます。
一方、行政保健師の給料は国が定めているため、どこの自治体に勤務しようと大きな差はありません。また、正職員であれば年数と共に昇給も見込めますが、産業保健師の場合は一概にそうなるとも限りません。
2.産業保健師の上司は「事務職」であることが多い
産業保健師の上司は、基本的に「事務職」であることがほとんどです。事務職の方なので、当然、医療に関する知識はありません。
行政保健師の現場であれば、上司が同じ「保健師」ではないにしても、公衆衛生に精通しているスタッフが上司となります。そのため、行政保健師から産業保健師に転職した人は、この点に戸惑うことが多いようです。
上司が捕まらず仕事がはかどらないこともある
産業保健師の上司は、保健分野に携わる仕事だけをしているわけではありません。他にも様々な仕事を抱えながら忙しく働いていることがほとんどです。そのため、何か相談したいことがあったとしても、行政保健師のようにすぐに上司に判断を求めることができません。
そうなると「上司を捕まえる」ことに時間が多くとられてしまい、結果として業務効率が悪くなることは避けられません。実際、そのことにストレスを覚える産業保健師もいるの
保健師としての自信がないと耐えられないかも
産業保健師の現場は基本的に1人職であり、かつ上司は「事務職」です。考えただけでも、未経験者にとっては辛い現場であることが分かります。
そのため、産業保健師への転職を後悔した人も少なくありません。つまり、よっぽど保健師としての自信がないと、耐えられない現場であることも考えられます。
3.産業保健師は行政保健師の時よりも幅広い知識が求められる
意外に思われるかもしれませんが、行政保健師よりも産業保健師の方が広い知識が求められます。産業保健師は、一般の医療知識から公衆衛生のことまで幅広く勉強していく必要があり、対応もかなり忙しく大変なので、結果ついていけずやめてしまったという人もいるくらいです。
産業保健師はオールマイティに活動していくことになる
行政保健師の場合は、母子担当・精神担当・介護担当などと担当部署が分かれています。しかし産業保健師の場合は社員のメンタル相談・健康相談・栄養指導など全ての分野に対しオールマイティに活動していくことになるのです。
勉強熱心なタイプじゃないとついていけない
産業保健師として働くのであれば、これまで培ってきた知識・経験だけではカバーすることができません。また、そこまで医療の世界と密接に関わっているわけでもないので、自ら積極的に勉強をすすめていかないと、仕事についていくことができません。
行政保健師とは違い、代わりにカバーしてくれる人がいないということを重く受け止めて転職を検討するようにしましょう。
4.産業保健師になることで年収が下がる可能性がある
公務員の行政保健師よりも企業に務める産業保健師の方が高収入だと思っている人も多いとは思いますが、実際はそうとも限りません。なぜなら産業保健師は「派遣社員」として働くケースが多いからです(この辺についての詳細は「正社員の産業保健師になるには?まずは派遣社員から始めよう」の記事をご参照ください)。
そのため、月収単位で見るとあまり差はなかったりもしくは産業保健師の方がよかったりしますが、年収単位でみると行政保健師の方が高くなることが多いのです。
絶対に正社員として働きのであれば「行政保健師」がオススメ
行政保健師の場合は、産業保健師よりも「正社員」の枠が広いです(自治体やタイミングにもよりますが)。正社員として働けば当然ボーナスももらえますから、もしどうしても「正社員として働きたい!」という方ことであれば、行政保健師の方がいいかもしれません。
行政保健師の時よりも給料を上げたい場合は?
行政保健師から産業保健師になることによって、雇用形態が「正社員」から「派遣」になる可能性がありますから給与アップを望んで、行政保健師から産業保健師に転職するのは非常にナンセンスです。
もし、行政保健師の方が給与アップを希望するのであれば、今の場所でキャリアアップを図るか、看護師資格を持っているのであれば病院施設に転職することが一番の近道です。
5.産業保健師の求人数は非常に限られている
最後に産業保健師の「求人」に関する注意点を解説していきます。まず何よりも知っておいてほしいのは産業保健師の求人数は非常に限られているという点です。
なぜなら、産業保健師は通常、企業に1~2人しか配置されておらず、また看護師・保健師の中でも非常に人気が高いためなかなか席が空かないからです。その上、行政保健師のように「試験に受かればOK」というわけでもありませんから、転職活動は簡単ではありません。
看護師転職サイト・ハローワーク・ナースセンターをフル活用しよう
産業保健師の求人数が限られているのは先に述べた通りです。そのため、産業保健師への転職活動を始めるにあたっては、まず「求人情報」をいかに多く集めるのかということに注力していかなければなりません。
そこでぜひオススメしたいのが看護師転職サイト・ハローワーク・ナースセンターの3つの媒体をフル活用することです。
産業保健師求人を多数掲載している看護師転職サイトに登録しよう!
看護師転職サイトは多数存在しますが、産業保健師に転職する際は産業保健師求人を多く掲載してある転職サイトを選ぶようにしましょう。「どの看護師転職サイトを使っても同じ」というわけでは決してなく、中には保健師求人が全くないサイトもあるため注意してください。
地方人を見つけるならハローワークかナースセンター
転職サイトと比較すると数は少なくなってしまいますが、ハローワークやナースセンターには「地方の求人に強い」という特徴があります。
そのため、少しでもチャンスを広げるためには、転職活動の際にはこれらの媒体も活用してみてください。なお、ナースセンターの利用については「ナースセンターで保健師求人を探す方法とメリット・デメリット」をご参照ください。
まとめ:「行政保健師の座」を捨てる覚悟はありますか?
産業保健師は行政保健師よりも雇用が安定しないだけではなく、実際に仕事をする上では非常に幅広い知識が求められ業務は結構大変です。にもかかわらず、年収は行政保健師の時よりも下がる可能性がありますから「行政保健師の座」を捨てたことに後悔がないと言い切れる覚悟を決めてから、実際の転職活動をするようにしましょう。
そしてその覚悟さえ決まってしまえば、転職活動も実際の業務も乗り越えることができるはずです。
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