行政保健師とは、都道府県の保健所か市町村の保健センターに勤務し、地域の住民の健康を守る保健師達のことを言います。行政保健師は、保健師という専門職でありつつ「公務員」としての役割も担います。活躍の場は幅広く、大変な仕事ではありますが非常に人気が高い職種でもあります。看護師としての臨床経験を経てから心機一転、行政保健師へ転職する人も少なくありません。このページでは行政保健師の仕事内容や、転職をする際の注意点について詳しく見ていきます。
1.行政保健師の仕事内容と役割
行政保健師は、保健センター勤務となるか保健所勤務となるかで対象者が変わってくるためそれに伴い仕事内容も変わってきます。また、保健師は地域に密着した仕事をしていく必要があるため、仕事内容は地域性にも左右されるところがありますが、行政保健師の仕事の概要をまとめると以下のようになります。
- 新生児訪問
- 健康診断(がん健診・婦人健診)の計画・実施
- 疾患を抱えながら地域で暮らす人たちの健康相談
- 感染拡大防止対策
行政保健師は新生児から高齢者までその地域に住んでいる全ての人たちを対象にしていきます。そのため、個々人の疾病予防から地域全体の健康増進まで、一次予防において実に幅広い分野に対処していかなければなりません。
新生児訪問
新生児訪問では、生後28日以内の新生児(里帰り出産の場合は生後60日以内)がいる家庭を訪問し、新生児の健康状態を把握すると共に、母親が抱えている不安を傾聴し対応していきます。この際に、虐待の恐れがある家庭や、母親の産後うつなどの早期発見につとめ、母子の安全を守っていきます。
健康診断
行政保健師は、乳幼児健診や生活習慣病予防の特定健康診断など、定期的に健康診断を行い市民の健康を守っていきます。乳幼児や高齢者の場合は定期的に健康診断を受ける機会がないため、保健所が健診の機会を設けています。
また、乳幼児健診は新生児訪問と同様に虐待される危険性のある子供の早期発見にもなります。「健診のために服を脱がしてみたら全身が痣だらけだった」というケースもあり、その際は即座に警察と連携を取り、子供の命の安全を守っていくのです。
疾患を抱えながら地域で暮らす人たちの健康相談
地域には「入院する間でもないけれど、一般の人たちのように普通に生活するのは難しい」という人たちもいます。例えば、何かしらの身体的な障害を抱えていたり精神疾患を抱えているような人たちがそれにあたります。行政保健師は、そのような人たちが地域で暮らしていけるような生活上・健康上の相談にものっていきます。
また、難病・結核・エイズ患者が日常生活を送れるように支援支援することも、行政保健師の重要な役割であるといえます。
感染拡大防止対策
行政保健師は地域全体の感染拡大防止対策を練ることも重要な役割です。結核の患者がいるとなれば、彼らが確実に服薬できるように指導を行い(DOTS)、施設で食中毒が発生したとなればすぐさま現場へ駆けつけ、原因の究明と拡大予防に努めます。また、過去のデータの統計をとり、今後感染拡大することが予想される疾病(SARDSやインフルエンザなど)について、市民に対し警告を行うこともあります。
2.行政保健師になるには
行政保健師になるためには、看護師と保健師の資格を療法保有している上で、公務員試験にも受からなければなりません。試験内容は、第一次試験に教養試験があり、二次試験に身体検査と面接といった内容になっていることがほとんどです。また、試験の難易度は各自治体によって違います。
公務員試験の受験資格
行政保健師の公務員試験の場合は、受験資格に年齢制限が設けられていることが多々あります。その多くは「20代後半まで」としているところがほとんどのようです。
しかし、臨時職員や非常勤職員の場合は、年齢制限が比較的広い範囲で設けられていることもありますので、行政保健師の公務員試験を受ける時は注意してみるようにしましょう。
公務員試験の受験時期
行政保健師を募集する時期は各自治体によって異なり、産休や育休のスタッフの穴埋めのために随時募集していますので、すぐにチャンスをつかめるように狙っている自治体のホームページなどを常にチェックしておく必要があります。そのため、試験の時期については一概に言えませんが5月・7月・9月に実施しているところが多いようです。また、行政保健師の採用の応募から実際に採用されるまでには1ヶ月ほどの時間がかかります。
つまり、1ヶ月で2次試験まである公務員試験の内容を網羅しておかなければならないので、前もって試験対策を万全にしておく必要があるのです
3.行政保健師へ転職するメリット
行政保健師には、一般病院の看護師や企業の産業保健師などには得られない公務員ならではのメリットが存在しています。以下に行政保健師へ転職するメリットをまとめています。
- 雇用が安定している
- 女性が働きやすい職場環境
- 規則的な生活ができる
雇用が安定している
「公務員と言えば安定」と考える人も少なくないでしょう。実際、よっぽどのことがなければ公務員が職を失うことはありません。また、給与が経営に大きく左右されることもないでしょう。そのため、行政保健師になれば公務員ならではの非常に安定した雇用環境の中で働くことができるのです。
女性が働きやすい職場環境
公務員と言えば、安定した立場が得られると共に、充実の福利厚生も手に入れることができます。もちろん、産休や育休も充実いているため、特に女性にとっては非常に働きやすい職場であると言えます。行政保健師に女性が多いのは、やはりこのような福利厚生が充実しているからだと言えるでしょう。
規則的な生活ができる
行政保健師の出勤時間は大体9時~17時です。正職員の行政保健師であれば、残業も抱えることにはなりますが、いずれにせよ規則的な生活が送れるのは確実です。夜勤シフトにうんざりしている病院看護師からすれば、このような規則的な生活ができるのは最大のメリットだと言えるでしょう。
4.行政保健師へ転職するデメリット
行政保健師は仕事の対象者が広いという特徴があり、それゆえのデメリットも存在します。以下に行政保健師のデメリットをまとめています。
- 高いコミュニケーション能力が不可欠
- 業務の幅が広すぎる
高いコミュニケーション能力が不可欠
行政保健師は地域に住んでいる多種多様な人たちと関わる必要があります。そのため、産業保健師には高いコミュニケーションスキルがなければ過度にストレスを抱えることにもなりかねません。
ある意味、病院よりも多様な人たちと関わっていくことが求められますから、基本的な対人スキルが十分に身に付いていなればつとまらない職種だと言えます。
業務の幅が広すぎる
産業保健師の仕事において、業務の幅が広すぎるのは仕方がないことなのですが、専門性を極めたい人にとっては業務の幅が広すぎるのはデメリットにも感じることでしょう。また、業務の幅が広いということは、それだけ多くの範囲について学んでいかなくてはならないということです。つまり、勉強熱心なタイプではないとこの仕事にはついていけないかもしれません。
5.行政保健師の平均給与
行政保健師の正職員の年収相場は400~500万程度であり、パートや非常勤正職員の時給相場は1000~1500円程度だと言われています。
行政保健師の場合は公務員の昇給制度に準じていますので、勤務年数が長いほど年収が上がるのは確実です。医療関係の仕事の中ではそこまで高い給料を貰える方ではないかもしれませんが、長い目で見るとかなり高水準のお給料をもらえる職種であると言えるでしょう。
6.行政保健師の求人の見つけ方
行政保健師の求人を見つける主な方法は以下の2つとなります。
- 各自治体の職員募集ページをチェックする
- 看護師転職サイトを利用する
行政保健師の場合は、看護師とは違い募集枠が非常に限られていますので、この2つの媒体を利用して常に求人案件に関するアンテナをはっておく必要があります。
各自治体の職員募集ページをチェックする
もし自分が必ず就職したい自治体が特定されているのであれば、その自治体のホームページの職員募集ページをチェックしておくようにしましょう。他にもポスターや新聞の折り込みチラシを適宜確認していく方法はありますが、一番タイムリーな情報を収集するためには自治体のホームページをチェックすることが得策です。
看護師転職サイトを利用する
看護師転職サイトは、看護師の求人だけを扱っているように思われがちですが、実は保健師の求人も多数扱っているサイトもあるのです。看護師転職サイトには非公開の求人も揃えていますので、出来るだけ沢山の求人情報を収集する媒体としても非常にすぐれています。
また転職サイトに登録すれば、担当のコンサルタントが無料でサポートしてくれますので、1人で転職の悩みを抱え込む必要もありません。
行政保健師の求人を探したい場合には、各自治体のホームページと看護師転職サイトの両方を併用し、効率的に転職準備を進めていきましょう。
まとめ
行政保健師は、病院の看護師とはまた違ったやりがいを沢山感じることができます。病院のような対処療法よりも予防療法に興味がある看護師にとっては最適な職場だと言えるでしょう。ただし、行政保健師になるには公務員試験を受ける必要があり、一筋縄では転職できないという特徴があります。
行政保健師への転職を考える場合は、転職サイトなどを利用して早めに情報収集すると共に、試験対策も万全にしていつでもチャンスをつかめるようにしておくと良いでしょう。
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