近年では、児童相談所にも保健師の配属が増えています。しかし、まだその存在はメジャーではなく、児童相談所内での保健師の専門性は、確立されはじめたばかりです。
なお、地域にもよって異なりますが、児童相談所における保健師の役割は「虐待を受けた児童への対応」「児童虐待の予防的活動」「職員並びに入所児童への性教育」です。
ここでは、それらの役割について1つ1つ詳しく解説し、最後に児童相談所の保健師求人の探し方についてご紹介していきます。
1.保健師の役割(1):虐待を受けた児童への対応
2.保健師の役割(2):保健所と連携した児童虐待の予防的活動
3.保健師の役割(3):職員並びに入所児童への性教育
4.児童相談所で働く保健師求人の探し方は?
5.まとめ:真摯に子供と向き合うことが求められる保健師
1.保健師の役割:虐待を受けた児童への対応
児童相談所は、医療機関との連携が必須です。しかし、児童相談所で中心となって働く児童福祉司は、医療の専門家ではありません。そのため、医療的な専門用語が理解できず、本来の業務に専念できないこともあるのです。そこで、医療の専門家である保健師が間に立ち、児に必要な医療的介入を、児童福祉司らや保護者に分かりやすく伝えていくことがまず第一に求められるのです。
また、保健師は医療関係者としての専門性を以下のように活かしていくことも求められます。
一時保護された児童の健康管理
心理的虐待期間が長かった児童の場合、身体所見にあからさまな傷跡が残っていないこともあります。しかし、だからと行って、身体的虐待を受けていなかったとは言い切れないのです。後の検査で、骨折痕が見つかるようなことは多々あります。
それらを放置すると、今後の成長に悪影響を及ぼす危険性もあるため、保健師は、虐待された児が身体を動かす様子などをくまなく観察し、異常の早期発見につとめていく必要があります。
虐待をした保護者へ育児支援も同時に行う
児童虐待が起こってしまった際には、児童への対応と同時に、今後同じことを繰り返さないために、虐待をしてしまった保護者への支援も行っていかなければなりません。子供の成長に関わる育児のアドバイスは、場合によっては、児童福祉司よりも保健師が言った方が受け入れられやすいこともあります。なぜなら、保健師は児童相談所の中で唯一の医療の専門家でもあるからです。
保健師ならではの視点で適切な助言を
児童相談所で働く保健師においては、保護者に受け入れられやすいような適切な助言や指導が出来ることも求められます。
2.保健師の役割:保健所と連携した児童虐待の予防的活動
児童相談所の保健師は保健所と連携を取ながら、児童虐待の予防的活動も行っています。乳幼児に関する分野においては特に、地域との連携を図りながら取り組みを行っているようです。
実際の取組みは地域ごとによって異なりますが、ここではその一例をご紹介させていただきます。
- ヤングママ子育て応援事業
- 育児不安を持つ親のグループミーティング
- ふれあい親子支援事業
地域全体を管轄する保健所保健師と、児童虐待のリアルな現場を把握している児童相談所の保健師が連携することで、効果的な児童虐待の予防活動に繋がるのです。
ヤングママ子育て応援事業
10代などの若い母親の育児は、精神的にも体力的にも困難な面が多く、虐待のケースがあとをたちません。そこで、若年妊産婦である「ヤングママ」達に対し、グループミーティングや個別支援を通し、児童虐待の防止につとめているのです。
育児不安を持つ親のへの集団・個別支援
まだ顕著化した児童虐待が起こっていなくとも、今後そうなりうる潜在的なリスクを抱えている親子は少なくありません。特に、育児不安が強い保護者は、今後児童虐待に発展する可能性が高いことが分かっています。そこで、育児不安が強い保護者に対し、グループミーティングによる集団支援や、家庭訪問・面接・電話相談を通した個別支援を行っているのです。
ふれあい親子支援事業
育児不安が強い母親に対し、臨床心理士・精神科医・保健師のチーム編成で運営されるグループが心理的にケアすることにより、虐待予防及び再発予防につとめます。
3.保健師の役割:職員並びに入所児童への性教育
児童相談所に寄せられるケースの中には、性的虐待の事例も少なくありません。また、児童虐待によって心に深い傷を負い、それをきっかけに性行動に問題が見られる児童もいます。そのため、虐待問題への対応と性教育には切っても切れないものがあり、児童相談所の保健師には、職員ならびに入所児童への性教育が求められるのです。
児童には根気強い性教育が必要
性の問題を抱える児童は、簡単に心を開いてくれるとは限りません。保健師との面接を「うざい」「ほっといてほしい」と言って、拒否してくることもあります。そして、そんな時、児童には「あなたのことが心配」というメッセージを送ることが大切です。
児童へ性教育を行い、行動変容を促していくことは、時間がかかることかもしれません。しかし、無知によって更なる悲しみを生まないためにも、根気強く性教育を行っていく必要があるのです。
職員全員が正しい性教育を行えるよう指導
児童相談所にいるスタッフであれば、すでに性教育の必要性や方法は充分に把握しているはずです。そんな中において、保健師に求められるのは、性感染症に対する正しい知識を伝授していくことです。また、男性職員等に関しては、女性ならではの身体の仕組みについても、医学的な立場からしっかり伝えておく必要があります。
4.児童相談所で働く保健師求人の探し方は?
児童保健所には必ずしも保健師が配置されているわけではありません。また、配置されていたとしても1~2人程度であるため、求人数は非常に限られており、1人で求人を探すことは非常に難しいのです。
そのため、児童相談所で働く保健師の求人探しについては、看護師転職サイト・ナースセンター・ハロ―ワークの3種類を併用していくことをオススメします。
看護師転職サイトの利用について
看護師転職サイトを利用する場合、まずは保健師求人を多数掲載してある転職サイトに登録するようにしてください。転職サイトにはキャリアコンサルタントが在籍しており、あなたと一緒になって児童相談所の求人を探してくれます。また、希望に合った求人が見つかれば、すぐにメールや電話でお知らせしてくれるのも、嬉しいポイントです。
なお、転職サイトは多数ありますから、少しでもチャンスを広げておくために、同時に2社は登録しておくことをオススメします。
ナースセンターの利用について
ナースセンターは全国47都道府県に設置された「看護師専用のハローワーク」です。ナースセンターにも、保健師求人は掲載されて数は少ないかもしれませんが、ナースセンターにも保健師求人はありますので、タイミングが合えば、児童相談所の求人にも出逢えるかもしれません。
なお、ナースセンターの利用方法については「ナースセンターで保健師求人を探す方法とメリット・デメリット」の記事もあわせてご参照ください。
ハローワークの利用について
最近では、保健師・看護師の求人探しについては看護師転職サイトを利用することが主流になってきましたが、実はハローワークにも豊富にそれらの求人が掲載されていることがあります。
これはナースセンターにおいても言えることですが、ハローワークは地方の求人に特に強いため、地方で児童相談所の求人を探している方は、ぜひご利用ください。
まとめ:真摯に子供と向き合うことが求められる保健師
児童相談所で取り扱うケースは、行政や学校で関わるケースよりもシリアスであり、それだけ、真摯に子供と向き合うことが求められる仕事です。そのため、それなりの臨床経験や人生経験を経てきた保健師だからこそ、活躍できる現場でしょう。もちろん、苦悩や葛藤も沢山あるはずですが「子供のために働きたい!」と考える保健師には、最適な現場なのではないでしょうか。
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1件の返信
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