保健師の中で一番人気が高い資格と言えばケアマネージャーです。人気の秘訣は、この資格が働きながらでも取得できる他、保健師の実地に役立つ知識が豊富に得られることにあります。また、職場によってはケアマネージャーの資格だけで給与がアップすることもありますから、現役の保健師にとってはメリットだらけの資格だと言えます。
このページでは、ケアマネージャーの役割や資格取得方法、また取得後のメリットについて解説していきますので、今いる職場でのスキルアップを検討されている保健師はぜひ参考にしてみてください。
1.ケアマネージャーの役割について
2.ケアマネージャー資格を取得するまでの流れと勉強方法
3.保健師がケアマネージャー資格を取得するメリット
まとめ:スキルアップにもキャリアアップにも繋がる資格
1.ケアマネージャーの役割について
ケアマネージャーは介護保険法で定められた公的資格であり、要支援・要介護と認定された人に対し、アセスメントに基づいたケアプランを作成し、ケアマネジメントを行う人のことです。また、ケアマネージャーは「介護支援専門員」とも呼ばれ、介護保険サービスを受ける地域住民にとっては欠かせない存在となっています。
ここではまず、そんなケアマネージャーの役割や仕事内容について詳しく解説していきます。
住民と介護保険サービスを繋ぐ
ケアマネージャーの主な役割は、介護が必要な地域住民に対し適切な介護保険サービスを繋ぐことです。
ご存知の通り、日本の介護保険サービスは年々複雑化しており、組み合わせ方も多様にあります。そこで、介護保険サービスを熟知しているケアマネージャーは、利用者の身体状況・経済状況を考慮した上でベストなケアプランを作成していきます。
ケアマネージャーの仕事内容
ケアマネージャーの主な仕事内容は以下の通りです。
- 介護を行う家族からの相談対応
- 要介護認定の審査
- 利用者に適したケアプランの作成
- 実際にサービスを利用するための書類手続き
このように、日本の介護事情を支えるケアマネージャーの仕事は多岐に渡ります。1つ1つ詳しく見ていきましょう。
介護を行う家族からの相談対応
ケアマネージャーは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に寄せられた家族からの介護相談に乗り、必要に応じて各種サービスを紹介し、また要介護認定の審査の手はずを整えます。
要介護認定の審査
病気などにより介護保険サービスが必要になった人や、今よりもさらに介護保険サービスを増やす必要のある人に対し、要介護認定の審査を行います。
実際に要介護認定を行う際は、利用者のお宅へ直接訪問して、要介護者の動作の確認・家族からのヒアリングを通し総合的に判断します。
利用者に適したケアプランの作成
要介護認定修了後、介護度に応じたケアプランを作成していきます。ケアプランの作成はケアマネージャーの仕事で特に重要なポジションを占めており、また、いかにして利用者に最適なプランを作成するのか、腕の見せ所でもあります。
実際にサービスを利用するための書類手続き
ケアプランに含まれたサービスを提供するにあたり、ケアマネージャーが窓口になって書類手続きを行います。ケアマネージャーが働くような行政機関は、とにかく書類が多いため、書類をミスなくさばくスキルが求められます。
2.ケアマネージャー資格を取得するまでの流れと勉強方法
保健師がケアマネージャーの資格を取得するまでの大まかな流れは以下の通りです。
保健師として5年以上かつ900日以上の実務経験
↓
試験申し込み(6~7月)
↓
試験(10月:各都道府県で開催)
↓
実務研修(計87時間:各都道府県で開催)
↓
登録・更新(5年ごとに研修へ参加して更新)
ケアマネージャーの試験は毎年1回、10月に開催されています。試験は各都道府県の管轄であり、現在住んでいる地域で受験します。なお、受験手数料は7000円~9000円となっています。
この項では、保健師がケアマネージャーの資格を取得するまでの流れと勉強方法について解説していきます。
まずは5年以上かつ900日以上の実務経験を積む
保健師がケアマネージャーの試験を受けるための条件は、5年以上かつ900日以上の実務経験があることです。なお、以下の保険・福祉・医療分野での国家資格を持ち同様の実務経験がある場合にも受験資格が与えられます。
・看護師・准看護師・助産師・介護福祉士・薬剤師・医師・歯科医師・精神保健福祉士・社会福祉士・理学療法士・作業療法士・栄養士(管理栄養士を含む)・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・歯科衛生士・柔道整復師・言語聴覚士・視能訓練士・義肢装具士
例)「保健師としての実務経験は3年だけど、看護師・助産師として実務経験が5年以上ある」という場合は受験資格アリということになります。
2018年度から受験資格に変更あり
なお2018年度からは、以下の職種で5年以上勤務した人に対して受験資格が与えられるようになったため、併せて確認ください。
- 生活相談員
- 支援相談員
- 相談支援専門員
- 主任相談支援員
6~7月に試験の申し込みを行う
例年、6~7月の間に願書受付が開始されます。受験する自治体のホームページをチェックし募集要項を確認の上、必要書類を揃えて所定の住所へ郵送します。(東京都のケアマネージャーの募集要項が記載されていホームページ→「東京都介護支援専門員 実務研修受講試験」)
10月に試験、11~12月に合格発表
10月にケアマネージャーの筆記試験が行われ、例年遅くても2ヶ月後までには合格発表が行われます(2016年度は11月22日に発表されました)。
なお、試験は60問出題され(五者択一:制限時間は120分)、介護支援分野と保健医療福祉サービス分野でそれぞれ規定の点数を取得する必要があります。
例年の合格率は15~20%
ケアマネージャー試験の合格率は15~20%であり、試験内容自体は年々、難化傾向にあるため、付け焼刃で受けるのではなくしっかりと対策しておく必要があります。
ケアマネージャーの試験対策について
働きながらケアマネージャーの試験対策を行う際は、最低でも6ヶ月の余裕は持っておいてください(初めての受験の場合は特に)。そして30分だけでもいいので、とにかく毎日勉強する習慣を身に付け、最後の1ヶ月間を追い込み期間にしましょう。
また、実際の勉強方法については独学でやっていくのもアリですし、1人で不安な場合は通信講座を利用すると良いでしょう。
独学の場合は最新版テキストを購入
独学で試験対策を行う場合は、書店で最新版のテキストを購入してください(テキストは毎年刊行されています)。まずはテキスト全体に目を通し、概要を把握したら細かいところを覚える作業に入っていきましょう。そして、ある程度知識に自信がついたら過去問にチャレンジしてください。過去問を何回も何回も解いていくうちに試験の傾向も見えてくるはずですし、過去問を完璧にマスターすることができれば、合格への自信もつくはずです。
一人で不安な場合は通信講座を利用
独学で試験勉強を進めていくことに自信がない人は、ケアマネージャーの受験対策ができる通信講座に申し込みましょう。費用は申し込む会社によって異なりますが、大体2万~5万が相場です。
独学でやっていくよりも費用はかかってしまいますが、保健師によっては通信講座の方が安心して勉強を進められるのではないでしょか。
いずれにせよ大切なのは、自分に合った方法で試験対策を進めていくことです。
試験合格後の実務研修を経て、資格取得へ
ケアマネージャーの試験に無事に合格した後は、各都道府県で実施される実務研修を全日程終了すれば、晴れてケアマネージャーの資格を取得することができます。
なお、実務研修は試験合格後の翌年1月~3月の間に行われ、計87時間となっています。
3.保健師がケアマネージャー資格を取得するメリット
保健師がケアマネージャーの資格を取得することで得られるメリットは以下の通りです。
- 介護保険に詳しくなる
- 職場によっては給与アップに繋がる
- 地域包括支援センターへの転職が有利となる
- キャリアアップする可能性が広がる
特に、地域の高齢者を対象としている自治体や地域包括支援センターで働く(働きたい)保健師にとっては、沢山のメリットがあることが分かります。詳しく見ていきましょう。
介護保険に詳しくなる
言うなれば、ケアマネージャーは介護保険のプロです。資格取得までには、沢山の介護保険について勉強することになりますから、実際にケアマネージャーとして働けるようになるまではかなり介護保険に詳しくなっています。
そして、非常に複雑化している介護保険に詳しくなっておけば、日々の仕事が今以上にやり易くなるはずです。
地域住民の相談にのる上で役立つ
自治体で働く保健師は、介護をしている家族や、介護が必要な本人達から介護保険に関する相談を受けることが多くあり、ケアマネージャーの資格があれば、その都度すぐに必要なサービスの提案をすることができます。
より幅広い視野で支援を行うことができる
上記のように直接サービスを提案する機会がなかったとしても、介護保険の知識があるだけで、より幅広い視野で支援を行うことができるようになります。そうなると、対象者へのアプローチもこれまでとは変化してくるため、新たに「やりがい」を見出すことにも繋がります。
職場によっては給与アップに繋がる
ケアマネージャーの資格取得を通し、保健師自身のスキルの底上げをすることができるため、取得を推奨しているところも多く(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所など)、そういった職場では資格取得後の給与アップが保障されているようです。
また、今の職場ですぐに給与アップに繋げることはできなくても、転職先でケアマネージャーの資格を持っているというだけで手当てがプラスされることもあります。
地域包括支援センターへの転職が有利となる
ケアマネージャーの資格を保有していることで、保健師の人気職場である「地域包括支援センター」への転職が有利になることがあります。
地域包括支援センターでは、必ずケアマネージャーを配置させることになっており、保健師や看護師とは別にケアマネージャーが配置されていることが多いです。しかしそれとは別に、保健師がケアマネージャーの資格を保有していれば大助かりな事業所もあるのです(その保健師に幅広い仕事を任せられるため)。
もちろんケースバイケースではありますが、ケアマネージャーの資格を持っていないよりは持っていた方が地域包括支援センターへの転職が有利になる可能性は高いでしょう。
キャリアアップの可能性が広がる
地域包括ケアの推進に伴い今後ますます需用が拡大するケアマネージャー資格は、保健師のキャリアアップの可能性を広げてくれます。
今よりも条件の良い職場へ転職できることも考えられますし、また今の職場で一目置かれ管理職への道が開けることもあるでしょう。
まとめ:スキルアップにもキャリアアップにも繋がる資格
保健師の人気資格であるケアマネージャー資格についておさえるポイントは以下の通りです。
- ケアマネージャーは住民と介護保険サービスを繋ぐ役割を担う
- 受験できる機会は年に1回
- 半年間の余裕を持って勉強すれば1回で合格できる可能性は高い
- 職場によっては給与アップに繋がる
- 幅広い視野で支援を行うことができるようになる
ケアマネージャーは将来性が高い資格であり、なおかつスキルアップにもキャリアアップにも繋がる資格でもあるため、これからずっと保健師としてやっていくのであれば取得するに越したことはないでしょう。特に、行政機関で働く保健師は、担当する地域住民のためにもそして自分自身の将来のためにも、これを機に取得を検討してみてください。
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