子育てと仕事を両立しなければならない保健師に一番オススメの職種が行政で働く「行政保健師」です。実際、独身の頃は看護師として働いていたとしても、結婚後は行政保健師に転職して仕事と家庭を両立させている保健師も大勢います。
行政保健師の場合、産休・育休期間は必ず臨時の職員を採用してくれるため、心置きなくこれらの制度を利用することができます。ただし、正職員として働くのであれば、残業も増えてくるため家族のサポートは欠かせません。
このページでは、そういった、子育て中の保健師が行政で働くメリット・デメリットと、転職する上での注意点を紹介していきます。行政保健師への転職を検討しているママ保健師はぜひ参照ください。
1.子育て中の保健師が行政で働くメリット
まずは、子育て中の保健師が行政で働くメリットについて紹介していきます。メリットは以下の通りです。
- 夜勤がない
- カレンダー通りの日程で働ける
- 福利厚生が充実している
- 産休・育休を心おきなくとれる
- 育児経験を仕事に活かすことができる
- 職場に子育て経験者が多い
このように、働く環境面でも、また仕事内容においても子育て中ならではのメリットが得られることが分かります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
行政保健師は夜勤が絶対にない!
看護師とは違い、行政で働く保健師は夜勤が絶対にありません。いくら託児施設などが整っていたとしても、子育てと夜勤を両立するのは非常にハードルが高いものです。だからこそ、結婚後に看護師から行政保健師に転職する人は多いのでしょう。
緊急事態が起こった場合のみ24時間体制となる
ただし、災害などの緊急事態が起こった場合は、夜中に呼び出しがかかることもあります。例えば、大地震が起こったり、自然災害が発生したりしたような時は、地域住民の安全を第一に考え24時間体制で業務にあたることが求められます。
カレンダー通りの日程で働ける
行政保健師は、土日祝日完全休みの、カレンダー通りの日程で働くことができます。看護師とは違い、ゴールデンウィーク・お盆休み・シルバーウィーク・年末年始など、年に数回、まとまった大型連休が取得できるのは嬉しいメリットでしょう。また、土日・祝日が休みであれば、子供の行事にも参加できることが多いです。
その代わり、基本的に平日は非常に休みづらいです。もし、保護者会や授業参加などが平日に行われる場合は、職場の環境によっては残念ながら参加できないこともあるでしょう。
福利厚生が充実している
行政保健師は公務員ですので、以下のような充実した福利厚生を受けることができます(詳細は行政によっても異なります)。
- 共済組合
- 豊富な休暇制度
- 退職金
- 通勤手当
- 住居手当
- 扶養手当
- スポーツ施設、レジャー施設、宿泊施設の割引利用
住居手当や扶養手当は、一家の大黒柱として働かなければならない保健師にとっては非常にありがたい福利厚生です。また、共済組合や豊富な休暇制度、また各種施設の割引利用などは、公務員ならではの福利厚生だと言えます。
共済組合の充実した年金制度
共済組合とは、公務員や私立学校教職員を対象とした社会保険組合です。共済組合には、第三の年金と言われている退職共済年金や、遺族共済年金など充実した年金制度が整備されています。臨時職員として働く場合はケースバイケースとなりますが、正職員の場合は共済組合への加入が必須です。
豊富な休暇制度
行政では、民間企業にもあるような産休・育休だけではなく、ボランティア休暇やドナー休暇といった特殊な休暇制度が用意されています。また、就学前の子供が病気やケガをした時に休暇できる制度もあります。
各種施設の割引利用
行政機関と提携しているスポーツ施設やレジャー施設の他、行政が運営する別荘地の宿泊施設を割引利用することができます。小さな子供を持つ保健師にとっては、とても利用価値の高い福利厚生だと言えるでしょう。
産休・育休を心置きなく取得できる
行政では、正職員が産休・育休を取得している間、必ず代わりの臨時職員を採用するため、心置きなく休暇を取得することができます。臨時職員を採用する制度が整っていない医療機関で働いた場合、産休・育休に入るのは心苦しい思いをさせられること多いのですが、その心配は無用です。
また、臨時職員はあくまで「臨時」であるため、契約時に勤務期間が明確に定められています。そのため、長期休暇から戻ってきた後も、自分の居場所は必ず確保されているのも嬉しいポイントです。
育児経験を仕事に活かすことができる
行政では母子保健分野に携わることも多く、自身の育児経験も存分に仕事に活かすことができます。例えば、出産への不安が大きい妊婦や、新生児との関わり方が分からず1人で悩みを抱え込んでしまう母親らに対して、「医療従事者」としてだけではなく、同じ母親として、心のこもったケアを提供することができます。また、思わず子供を激しく怒鳴ったり叩いたりしてしまうような母親に対しても、一方的に指導することなく、相手に寄り添いながらサポートすることができるはずです。
仕事では十中八九、母子と関わる
子育て経験がなければ行政保健師はつとまらないというわけではありませんが、仕事の性質上、十中八九、母子と関わることになるため、あるにこしたことはないのです。
また相談してくる側からしても、自分と同じように子育てに悩んだ相手に対しては、より心をオープンにして接してきてくれるはずです。
職場に子育て経験者が多い
行政保健師が働く職場は、子育て経験者が多いのが特徴です。そのため、もし、子供の急な発熱などで休まざるをえなくなった場合などは周囲の理解も得やすいですし、自分自身が子育てで悩んだ時には身近に相談できる相手が大勢います。
独身のスタッフが多い職場だと、子育て中のスタッフは肩身が狭くなってしまうものですが、行政機関であればその心配は無用です。
2.子育て中の保健師が行政で働くデメリット
子育て中の保健師にとって、行政で働くメリットは沢山ありますが、もちろんデメリットも存在します。そのデメリットとは以下の通りです。
- 正職員は残業が多い
- 公務員試験が大変
- 配属先が広範囲であるため通勤が大変になることもある
行政保健師に夜勤がないのは喜ばしいことですが、意外と残業時間が多いことに悩んでいる子育て中の保健師は少なくありません。また病院と違い、行政で働くためには公務員試験に受からなければならないのも難点です。詳しく見ていきましょう。
正職員の行政保健師は残業が多い
公務員は定時で来て定時で帰るイメージが定着していますが、行政保健師の場合はそうとも限りません。行政によっても異なりますが、正職員で働く場合は、残業(前残業を含)が当たり前のようにあります。中には、毎日20時頃まで残業している保健師もいるようです。
残業を避けたいのであれば「臨時職員」で働くしかない
子育ての都合上、「絶対に残業を避けたい!」というようであれば、臨時の行政保健師として働くのが一番です。臨時であれば、正職員と比較すると仕事の負担は軽くなりますし、当然残業も少なくなります。ただし、給与や福利厚生面は正職員よりも劣りますので注意しましょう。なお、臨時職員に関しては「臨時の行政保健師になるには?仕事内容とメリット・デメリットを解説!」をチェックしてみてください。
公務員試験が大変
当然のことですが、行政保健師になるためには公務員試験に受かる必要があります。公務員試験対策は一朝一夕で出来るものでもありませんし、ましてや子育てをしながら試験対策を行うのは並大抵のことではありません。ただし、一度試験に受かってしまえば、その後はよっぽどのことない限り、公務員の行政保健師として働き続けることができます。ですので、本気で行政保健師になることを目指すのであれば、腹をくくって短気集中決戦で試験に挑むことをオススメします。
ダラダラやるのではなく短気集中で!
どうせ試験を受けるのであれば、出来るだけ1回で受かることを志しましょう。そのためには、試験対策をダラダラやるのではなく、短期集中でやっていく方が効率的です。その間、子育ては信頼できる家族や知人、保育所に協力してもらい、できるだけ自分1人で集中できる空間をつくっていきましょう。あなたの本気度が伝われば、必ず周囲の人は協力してくれるはずです。
なお、公務員試験対策については「臨時の行政保健師になるには?仕事内容とメリット・デメリットを解説!」を参照ください。試験流れから対策のコツまで詳しく記載してあります。
配属先が広範囲であるため通勤が大変になることもある
行政保健師の配属先は以下の通り、広範囲に及びます。
- 精神保健福祉センター
- 保健所
- 保健センター
- 本庁etc.
保健所勤務か保健センター勤務になるかは、自身で選べる行政もあります。ただし多くの場合は、配属先を選択することはできません。そのため、もし郊外にあるような施設に配属された場合、通勤が大変になってしまうこともあります。
許容通勤時間は1時間
子育てをしながら働く場合、許容通勤時間は1時間が限界なのではないでしょうか。1時間30分、2時間と、通勤時間がかかってしまうと、子育て云々以前に自分自身が倒れてしまう可能性もありますので、注意しましょう。
3.子育て中の保健師が行政へ転職する際の注意点
子育て中の保健師が行政へ転職する際の注意点は以下の通りです。
- 行政によって風土が異なる
- 家族の協力が必要になる
- 地域包括支援センターへの転職も視野に入れる
何よりも注意しなければならないのは「行政によって風土が異なる」という点です。また先述したように、場合によっては家族の協力も必要になるということを視野に入れておかなければなりません。それぞれ詳しく見ていきましょう。
行政によって風土が異なる
行政によっては激務状態が慣習化し、残業時間が長く独身でなければ続けられない職場もあるようです。そういった職場に配属となってしまった子育て中の保健師からは「夜勤がないのは魅力だけど、これだったら看護師の日勤勤務をやっておいた方がよかったかも」といったような声も聞かれています。
一方、子育て中の保健師が多く、全体的に協力し合って早く帰ることが慣習化された職場もあります。このように、職場ごとに風土が異なるのは仕方がないことではありますが、できるだけ働きやすい行政を選択するにこしたことはありません。
可能な限り、情報収取を行うことが大切
行政の保健師求人は看護師転職サイトなどの媒体では掲載されないため、事前の情報収集が難しいところではありますが、人脈を辿ってすでに働いている人に話を聞くなど、できる限りの情報収集を行っていくようにしましょう。
家族の協力が必要になる
行政保健師になるための試験対策期間も、また行政保健師になってからも、大なり小なり家族の協力は必須です。特に、働き出してからは突発的な残業に見舞われることもあるため、自分1人だけでは仕事と家庭の両立は難しいことを心得ておきましょう。
地域包括支援センターへの転職も視野に入れる
行政保健師の求人は年中あるわけでもありませんし、試験も1回で受かるとは限りませんから、すぐにでも転職をしたいのであれば、地域包括支援センターへの転職も視野に入れるようにしましょう。なぜ地域包括支援センターなのかというと、ここでは公務員に準じた待遇を受けることができますし、また、いずれ行政保健師になるにしても地域包括支援センターでの経験は必ずプラスになるからです。詳しくは「保健師が地域包括支援センターに転職する5つの注意点」を参照ください。
まとめ:小さい子供を育てる保健師には最適な職場
総合的に判断すると、行政保健師は、子育て中の保健師にとって非常にメリットが大きい職種だと言うことができます。産休・育休の取りやすさを考慮すると、特に小さい子供を育てる保健師には最適な職場なのではないでしょうか。
ただし、行政保健師は決して楽な仕事ではないということは肝に銘じておくようにしてください。いくら家庭があっても、避けられない残業も時にはありますから、家族のサポートを得ることは必須です。
<この記事が保健師の方のお役に立てたらシェアお願いします。>